
カディラキャピタルマネジメントの2023年12月の活動として、投資対象企業との対話内容を報告します。
私たちは、エンゲージメント活動を具体的に開示することで、ステークホルダーとの信頼関係を深め、「インベストメントチェーンを先へとつなぐ」というミッションの遂行を目指しています。
カディラキャピタルマネジメントは本田技研工業(以下、ホンダ)に対してインパクトKPIの設定を提案しています。ホンダは二輪車で世界シェアトップを誇っています。同社は手頃な価格の二輪車を新興国で多く販売していますが、これらは日常の移動手段として使われていることから、現地の人々の生活の質を改善する効果が大きい事業であると言えます。手頃な二輪車で生活の質を改善するというのは、創業者の故本田宗一郎氏が自転車に内燃機関を取り付けて販売したときから、同社が営み続けてきたビジネスです。
しかし、時代の経過の中で、同社売上の中で四輪車事業の構成が大きくなったことから、二輪車事業は主力ではなくなり、投資家向けの説明において強調されることも減りました。現時点では新興国の生活という観点において、ホンダから明確な開示は行われていません。
ホンダは四輪車については2040年までにガソリン車をゼロにするという目標を発表していますが、二輪については現地の電力事情や生活者の購買力の関係でガソリン車全廃は四輪より遅れることが見込まれています。環境対応が遅くなることの妥当性を対外的に理解してもらうためには社会的な意義を明確にすることが必要だと思われます。
また、社会的な意義を検討することは新しいサービス展開にもつながります。例えば、同じく二輪車製造を行っているヤマハ発動機は新興国で二輪車リースを通じて現地の人々に収入向上の機会を提供するサービスの準備をしています。ホンダは販売店網や金融事業を有していることから、同様の展開を行う能力が十分にあると考えられます。生活の質向上に貢献すれば、ブランド力向上につながり、長期的には収益にもプラスの影響を及ぼすことが期待されます。カディラはこの点を議題に、ホンダに対してインパクト視点から事業モデルを進化させることへの期待を伝えました。
カディラキャピタルマネジメントは、ファンダメンタルズ分析にインパクトを組み込んだ独自モデルを用いて企業価値を計測しています。この計測モデルを活用すると、財務・非財務の多様なファクターが企業価値に与える影響を視覚的に捉えることができます。カディラはIRミーティングの場で、このモデルを見せながら、企業が抱える課題とその解決策についての具体的な議論を行っています。このような対話は、向上心が高い企業に受け入れられる傾向があります。
その事例の一社が、リクルートホールディングス(以下、リクルート)です。リクルートは人材サービスと生活情報メディアの運営を行っています。2012年のIndeed買収を機にHRテクノロジー分野を中心に、グローバルでの成長を実現し、現在世界60カ国で事業展開しています。同社は事業だけでなく、サステナビリティ分野でも先進的な挑戦を続けていますが、中でも特筆すべきは独自のインパクトKPIの設定です。
リクルートは2021年に「就業までの時間を半減させる」と「障害を持つ3000万人の雇用を実現する」というKPIを設定しました。これらは「世界の約40%の人々が、3か月間収入がないと貧困に陥ってしまう」という課題を解決するために、同社の強みを活用してできることとして設定されたKPIです。
カディラのチーフインベストメントオフィサーはリクルートと2020年に対話を始めて以来、同社のサステナビリティ対応に対してフィードバックを提供し続けています。例えば、インパクト管理の方法論について意見交換を行い、その中でインパクトKPIの設定を後押ししました。その後リクルートが上記のインパクトKPIの発表したことから、そのKPIを投資家目線で評価するレポートを作成し、リクルートに共有しました。また、2023年にはインパクト評価の専門性を有する投資家やNPO運営者を集め、リクルートとの意見交換会を実施しました。同社はこの意見交換会をうまくネットワーキングの場として活用したようです。最新のミーティングでは、前述したカディラ独自開発のインパクトを組込んだ企業価値計算のモデルについて、詳細な解説を行う形での情報提供を行いました。
このような独自のアプローチは企業にとって有意義であることはもちろん、私たちも企業の新たな一面を知ることができることから、投資判断の上で有効に作用します。今後も投資とエンゲージメントの手法に磨きをかけていく所存です。
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