
カディラキャピタルマネジメントは、企業の社会的価値の把握、ガバナンスの多様性、資本市場における成長戦略、上場・非上場の課題といった構造的テーマについても、建設的かつ中立的な立場で意見交換を行っています。
近年はプライム上場企業以外でも、サステナビリティや社会的インパクトについて関心をもつ企業が増えてきており、一方でそうした企業は、これらをテーマに資本市場と対話をする機会も限られていると聞きます。カディラでは、企業規模を問わずインパクト志向の企業との対話を積極的に行っています。
今回はエコナビスタ株式会社との介護現場の実情を踏まえたKPI設定やサービスの社会的価値に関する対話事例をご紹介します。
エコナビスタは、2023年に上場した介護DX支援企業で、医師の梶本修身現会長が親の介護の経験からケア負担軽減のために創業しました。独自の睡眠データ解析技術とセンシング技術を核にハードウェアとソフトウェアを組み合わせた見守りサービス 「ライフリズムナビ」を介護施設運営会社などに提供しています。
同社へは企業理念に共感するとともに、経済的価値と社会価値の高い独自性のあるサービスを提供していること、介護業界の人材不足がますます加速することに注目し、2023年10月から対話を行なっていました。
カディラでは、ビジネス現場でのリサーチを重視しており、他の上場企業を通じて介護や福祉施設の見学をいくつか行ないました。その中で介護現場の課題を直接確認するとともに、「ライフリズムナビ」を導入する介護施設の職員の方からは夜勤の時間帯の生産性が劇的に改善した、見守り機能により状況把握が容易になり要介護者のウェルビーイングが向上している、との意見を得ていました。これらの意見を同社にも伝え、介護する方、介護される方、それぞれへの貢献について解像度を上げて、KPI設定を行なう事などの提案を行なっていました。
また渡邉社長は、資本市場における投資家の動向に強く関心を持たれており、上場と未上場で投資家層の違いがあり分断が起こっていることや、上場がゴールとなり、その後の成長が限定的になる企業が見られるなどIPOマーケットや企業の実態について情報提供を行なうとともに、社会的インパクトの観点での企業評価について説明を行なっていました。
直近では、株主総会議案で女性取締役の選任がない点について問い合わせを行ない、同社が取締役会の多様性は重要と考えていることや女性従業員の活躍を推進しており、社内人材の育成・登用だけでなくハイレベルで執行に携わる人材の外部登用も含めてあらゆる選択肢を検討していくとの回答を得ていました。
3月14日、エーザイ社が、同社株式に対して公開買い付け(TOB)を行なうことを発表しました。上位3位までの大株主であるココアアセット、ヒューリック、東京瓦斯は、TOBへの応募契約を締結しており、完全子会社化を目指しています。同社とエーザイは、24年7月に業務提携を締結しており、介護施設入居者の認知機能の変化に対する実証実験などを行う見込みです。将来的には、健常高齢者や在宅介護領域、また医療機関向けへの導入が広がる可能性があるでしょう。
今後の業績伸長が見込まれる局面であり、上場廃止となれば、今後少数株主として対話を行なう事や企業価値向上に伴走が出来なくなる点は残念です。しかしながら、上場時には成し得えなかった拡販がスピード感をもって進展することを期待しています。
近年TOBやMBOを発表する企業が増加していますが、これには東証の市場改革による資本コストや株価を意識した経営の要請や株主との対話推進と開示強化による上場コストの増加に加えて、アクティビスト活動の活発化やPEファンドによる運用資産の増加などが促進していると考えています。結果として、非上場化がベストと判断する上場企業は今後も増加すると想定していますが、TOB価格の妥当性といった少数株主との利益相反等について留意する必要があると考えています。
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