2025/6/20

「プログレスレポート 2024」を題材とした対話について

当月は金融当局やアセットオーナーと、カディラ発行の「プログレスレポート 2024」(*1)を題材とした対話を行いましたので、その件について報告します。

カディラでは3月にプログレスレポートを発行しました。レポートでは社会課題に対して私たちの認識を示したうえで、投資先企業とどのように向き合っているのかということをまとめています。レポートはウェブサイトで公開をした上で、ステークホルダーの方々とのミーティングにおいて紹介する形で、コミュニケーションツールとして活用しています。金融当局やアセットオーナーなど、インベストメントチェーンにおける主要なステークホルダーとのミーティングにおいては、レポート公開前に期待していた以上に、多くのフィードバックをいただくことができています。

アセットオーナーは社会的インパクトについて関心を高める一方で、インパクト投資の定義をなぞるだけでは投資業務への活用が難しいという認識を持ち始め、その解決方法を模索しています。そのような中、ある日系の保険会社からは、アセットマネージャーと深い議論をしたいがなかなか実現できておらず、その中で私たちのレポートはその「きっかけ」を提供するものであると、高い評価をいただけました。また、カディラの活動が、金融当局の進めるサステナブルファイナンスの考え方と整合的であるという意見や、GPIFが取り組み始めることを表明した「インパクトを考慮した投資」やPRIが掲げる「手段的IFSI」にも合致する取り組みであるという意見が聞かれました。

レポート内容で特に関心が高かったのは二つの点です。一つはカディラ独自の企業価値計測手法であるIIV(Impact Integrated Value、インパクト統合価値)の超長期予想に用いている「持続的均衡」という考え方です。当社ではサステナビリティを重視する観点から、永久成長率という考えを見直し、ある時点で成長が均衡点に達し、その後はゼロ成長になることを前提とした「持続的均衡」という概念を使って、企業価値計測モデルを構築しています。これは、DCF(キャッシュフロー割引モデル)で企業価値を計測する際の長期予想で一般的に用いられる、永久成長率の考えとは異なる考え方を提示するものです。永久成長率の設定は計算を容易にするという実務面でのメリットがあるため、広く普及していますが、永久に成長するという前提は、資源利用の増大や格差拡大などの負の側面と表裏一体であることから、これに代わる方法論として持続的均衡モデルを提唱しています。

ステークホルダーとの対話においては、この持続的均衡という考え方について納得感を持たれる方が多く、100年単位の時間軸で投資を考える上で有益であるという意見や、サステナビリティ意識の高い企業との対話を深めることに資する概念であるだろう、という意見が寄せられました。その一方で、従来型の投資モデルに基づくプレーヤーにとっては、大きな枠組みの転換を迫られるため、考え方の浸透には地道な活動の継続が必要という認識も示されました。

関心が高かったもう一つの点は、カディラの行っているエンゲージメントについてです。特に、上述のIIVを活用して、サステナビリティ対応と企業価値向上の関係性を主題とした対話を積極化しているという点については、多くの関心が示されました。加えて、協働対話の活動についても強い関心が寄せられました。ここで言う協働対話とは、企業一社と複数の機関投資家によるミーティングです。サステナビリティに関心の高い投資家を、集めることで密度の濃いミーティングを行います。企業側にとっては「サステナビリティと企業価値」に特化した議題において「複数の機関投資家の重層的なフィードバック」を得られる、有意義な機会となります。また、2025年中に予定されている日本版スチュワードシップ・コードの改定案(*2)において、協働エンゲージメントを積極化する内容が盛り込まれていることから、機関投資家にとってもカディラの活動が協働エンゲージメントの良い機会になりうるという期待の声が寄せられました。

当社にとって初のプログレスレポート発行となりましたが、レポートを題材とした対話を通じて、活動のアイデアを得ることができ、制作労力に見合う成果が得られたと感じております。来期に向けては、大学などの研究機関との協力関係を通じて科学的な検証を強化するなど、より一層の高度化を目指して活動をすすめていく方針です。

*1 https://cadiracm.com/pp

*2 https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20250321-3.html

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