
日本におけるインパクト投資の拡大を目的としているGSG国内諮問委員会が、インパクト企業の情報開示についてのガイダンス案を公開し、パブリックコメントの募集を行いました。カディラキャピタルマネジメントでは、当社の意見を作成して提出を行いました。
提出した内容は以下の通りです。
本ガイダンスはインパクト志向の高い人同士の対話を高度化することに資する内容であると思われる。一方で、資本市場の一部で局所的に高度化が進むとインパクトに馴染みを持たない人が排他的な雰囲気を感じて関与を避け、結果としてインパクト企業を取り巻く資金循環に悪影響を及ぼす可能性も否定できない。
本ガイダンスの狙いは「インパクト志向の高い人」が「インパクトに関心のない人」と対話をする際の「意見のすれ違いを防止する」ことも含まれているのだと推量する。もしそうであるならば啓蒙活動を通じて広く資本市場関係者のインパクト志向を高め、インパクト投資の活性化を促すことを目的に含んだ方が良いのではないか。
インパクト企業が活躍する場づくりとして、理想的には「インパクト志向の高い投資家の増加」という経路があるべきと思うが、それを省いて、「インパクトに関心のない人がインパクト企業に投資をする」ことを推奨すると、一時的なブームやインパクトウォッシュの助長につながることが懸念される。
なお、本来インパクトを追求しようという企業は、利益以外にも企業目的があるということを公言する存在である。そのような企業が上場する場合、その経営理念に共感する人に投資をしてもらうことが理想的な形であると思われる。インパクト企業の外観を整えるための開示や、共感しない人を説得するための開示にならないように留意が必要だろう。
インパクト関連の情報開示について、その内容を(ガイダンス草案の17ページにあるように)「開示されることが望ましい要素」として網羅すると、暗示的に「開示すべき」という圧力が働く可能性がある点が懸念される。企業が過度に詳細な情報開示を行うようになると、企業と投資家双方に過大な負担をもたらし、嫌煙されてしまう。任意開示においてその仕組みが嫌煙されると活用されないままになることが懸念される。むしろ、企業が自発的に「開示したい」と考え、投資家が企業を理解する上で「意味がある」と考える情報に焦点を当てた開示を推奨した方がよいのではないか。つまり、企業にはフレームワークに則るよりも自社のミッションやパーパスを一番正しく表現できる方法で開示をしてもらう方が、正しい情報が伝わるのではないか。
なお「開示されることが望ましい要素」として記載されている内容そのものは、見方を変えると「投資家が開示資料を読み解く場合の思考回路」と読み取れる。よってガイダンスの表記を「投資家が参考にするポイント」として記せば企業にとって開示のコツを得るヒントになると思われる。企業が無用な圧力を感じずに投資家の思考回路を知ることができれば、自分らしい活き活きとした内容を、投資家の思考回路への配慮を含めて開示するということが可能になるのではなかろうか。
また、別の観点から付言すると、上場に関与する資本市場関係者(主幹事証券、上場審査、機関投資家)に対して、インパクト企業が従来の上場企業の開示とは異なる開示(例えばロジックモデルなど)を行う可能性があることを周知するという意味で、ガイダンスが網羅的にフレームワークを示すことは有意義だろう。
インパクト企業が自社にとって重要と考えて開示している内容を、上場プロセスの関係者が過去の経験のみで排除するような、意見のすれ違いが起こることを未然に防止するために、ガイダンスが有効な役割を果たすことが期待される。
インパクト企業が労力を投じて追加開示を行うとすれば、その見返りとして求めるものは、「上場後もインパクト追及が可能となること」にあるのではないか。上場して不特定多数の投資家との関係が始まったとしても、理念の追求を第一に行いたいという企業の情熱を、資本市場関係者がサポートすることこそが、上場企業がインパクトを生むための環境整備に欠かせないだろう。
そのためには、インパクトの追求が経済的リターンと同等かそれ以上に重要であるということを明確に宣言ことが重要であろう。企業姿勢を明確に示すことでインパクトの追求に共感する投資家を呼び寄せることができる。
真のインパクト企業であるならば、上場に際して「インパクトを最優先する」と高らかに宣言したい欲求を持っているのではないかと推察する。逆にそれを躊躇するならば、インパクトウォッシュの懸念があると言えるのではなかろうか。
今回のガイダンスがきっかけとなって、「インパクト企業」と分類されていない、「既存の多くの上場企業」がインパクト志向を高める潮流に発展することを期待する。ほぼすべての企業が何らかの形で世の中にインパクトを与えているはずである。上場株に投資をする立場としては、大企業が社内にあるインパクト事業の種を育てることにも関心を払いたい。
例えば売上1兆円の会社がその10%をインパクト志向の強いビジネスにすることもインパクトスタートアップが売上1000億円に成長することも、世の中が受ける恩恵としては大きな差がないのではないか、と考える。
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