
カディラキャピタルマネジメントは「インベストメントチェーンを先へとつなぐ」というミッションを掲げて活動しています。ミッション遂行のためには社内外のステークホルダーとの協力関係が欠かせません。私たちは投資対象企業との対話など、活動内容を具体的に開示することで、ステークホルダーとの信頼関係を深めていくことを目指しています。
今月は以下の活動について報告します。
まず企業概要ですが、日清食品ホールディングスは、1958年に安藤百福氏によって設立された企業で、即席麺の製造・販売を主力事業としています。同社は創業来、製品開発力とマーケティング力を高めることで、新しい「食」を創造することに邁進しています。主力商品のカップヌードルは1971年の発売ですが、それまで世の中になかったカップ入りの即席麺という商品ジャンルを作り出しました。持ち運びやすい容器や、それに適した麺の成型方法などのイノベーションによって新しい商品を生み出しました。
日清食品ホールディングスは現在、環境と健康を重視した製品開発に力を注いでいます。環境面では、動物性に比べて環境負荷が低い植物性タンパク質の活用を進めています。具体的事例として、カップヌードルの主要具材の一つに「ダイスミンチ」というサイコロ型ミートがありますが、これには⼤⾖を原料として使用し、環境負荷を抑える工夫がなされています。また、現在、ヴィーガン対応や培養⾁などの研究開発が進められており、技術⼒とマーケティング⼒で今後さらなる環境負荷低減を目指しています。
一方の健康面で同社が重視しているのが、現代⼈が摂取するカロリーや栄養素の偏りという課題です。具体的には、「オーバーカロリーによる健康リスクの増加」や「間違ったダイエット方法による『隠れ栄養失調』の増加」という点を社会課題として設定しています。その解決のために、栄養バランスが良く⼿軽に食べられる⾷品を製造販売に取り組んでいます。最も先進的な商品は完全栄養食です。2021年から企業向けに社員⾷堂のメニューとして提供を開始し、2022年には一般向けのパッケージ商品を「完全メシ」というブランドで発売開始しました。「完全メシ」は、「日本人の食事摂取基準」で設定されたビタミンやミネラルなど33種類の栄養素を含み、おいしさも追求して開発されたブランドです。即席麺や冷凍食品など多様なラインナップを揃えており、2024年6月までの累計出荷数は2800万食に達しています。完全メシは現時点では日本でのみ展開されていますが、将来的な海外展開も視野に入れています。国によって栄養バランスの課題が異なるため、現地の事情に合わせた製品開発を検討しているようです。
日清食品ホールディングスは、サステナビリティ開示においても独自性の高い活動を展開しています。例えば、非財務KPIと企業価値の関係性について分析結果を公開しています。例えば「社会課題に貢献する製品数」が当年の企業価値に1.0%のプラス効果をもたらすという内容などが開示されています。
また、コミュニケーションにおいても、自社の強みであるマーケティング力を活かした独自の取り組みを行っています。特筆すべきは統合報告書の内容を基に、わかりやすさとデザイン性を重視した「VALUE CREATION BOOK」(*1)という冊子です。この冊子はブランディング部門やマーケティング部門が関与し、歌舞伎やアニメなど日本文化の要素をデザインに取り入れて編集されています。このVALUE CREATION BOOKは世界最大のアニュアルレポートのコンペティション「International ARC Awards 2023」で最高賞を受賞するなど、世界基準で高い評価を得ており、同社の知名度を高めることに一役買っています。
カディラは、日清食品ホールディングスと定期的にミーティングを行っています。これらのミーティングでは、同社が行っている独自の取り組みについて、その背後にある企業の考え方を確認しつつ、これからも活動を継続して推進していくことへの期待を伝えています。特に、同社の卓越したマーケティング力を活かして、消費者の環境意識や健康意識を向上させることが、社会に対する大きな価値をもたらすと考えています。この期待に対し、日清食品ホールディングスは「健康増進が医療費削減などの成果につながることを明らかにしていきたい」と回答しました。このように、同社は情報開示に対するフィードバックを求め、それを次の開示に反映させるという、対話のサイクルをしっかりと機能させており、この体制は高く評価できます。また、日清食品ホールディングスから、間もなく発行される統合報告書に関するフィードバックを求められたため、次回のミーティングの主要な議題として取り上げ、対話を進める予定です。
一方で、当社からは改善すべき点についての指摘も行っています。例えば、日清食品ホールディングスに関する、ESG情報提供会社のデータに不備があるかもしれないということに、我々が気づき会社側に問い合わせをしたところ、担当部門が迅速に確認作業を行い、データの不備が修正されたことがあります。
このデータの不備が放置されていた場合、同社の健康安全に対する評価が悪化する可能性があったため、迅速で適切な対応が企業価値の向上に寄与したと考えています。また、最新のミーティングでは、公正取引委員会から「再販売価格の拘束の規定に違反するおそれがある」という警告を受けた件について、その経緯と対応状況を確認しました。会社からは経営トップが強い問題意識を持っており、業務改善を進めているというコメントがなされました。我々としては同社が適切な対応を進めていくことを期待し、今後の展開を見守る方針です。
*1 VALUE CREATION BOOK (価値創造ブック) | 日清食品グループ (nissin.com)(日本語)
カディラでは、投資やサステナビリティについて多面的な視点を取り入れることを目的とし、創業時より社外のアドバイザー(現在5名)と個別で月次でミーティングを行い、意見交換を行っています。
アドバイザーは、ファンドマネージャー経験者、アカデミア、環境NPOメンバーなど多様なバックグラウンドを有しており、それぞれが専門性に基づいた意見を提供しています。また、アドバイザーのネットワークが起点となり、上場企業向けのサステナビリティ関連セミナーを開催するなど、エンゲージメント活動に厚みをもたらす事例も生まれています。
先日、アドバイザー全員とカディラのメンバーが対面で集まる機会を設けました。アドバイザー同士が顔を合わせるのが初めてであり、それぞれの自己紹介から取り組んでいる事、そしてカディラの活動についてのフィードバックをもらいました。
その中で、志や理念が実際のビジネスとして回り始めてきている点や業界を盛り上げていくマーケットビルダーとしての役割を担っている点などを評価頂く一方で、インパクト計測や投資先企業の変化への貢献の検証などについては、更なる進化を期待するという指摘がありました。その後、親睦会にも全員ご参加を頂き、異分野の専門家たちが活発に意見交換がなされ、カディラのメンバーにとっても非常に有意義な機会となりました。
カディラでは、運用開始1期目の運用報告も兼ねて、年明けにアニュアルレポートの発行を考えており、アドバイザーの声はその誌面においても、ご紹介していく予定です。
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