
当月はウェザーニューズについて、カディラの投資見解とエンゲージメント活動について紹介します。
会社概要
ウェザーニューズは、1986年6月に設立された民間気象情報会社です。創業者の石橋博良氏が商社勤務時代に、取引先の船舶が嵐で沈没したことをきっかけに、船乗りの命を守るために海洋気象サービスを始めたことが創業の経緯です。創業者の後を継いで、前社長の草開氏が2006年に社長に就任し20年弱務めた後、2024年6月に創業者の息子である石橋知博氏が社長に就任しました。石橋社長は大学卒業後にヒューレッド・パッカードに就職した後、2000年にウェザーニューズに入社し、個人向け事業担当やアメリカ駐在などを経て社長となりました。
ウェザーニューズは法人向け事業として、物流、交通、エネルギーなどの産業に対して気象に関連したリスク対策や運営支援の情報を提供していることに加え、個人向けには「ウェザーニュース」(*)のサービス名で動画配信やスマートフォンアプリを通じて天気予報コンテンツを提供しています。スマートフォンアプリは、ユーザーが自分の所在地の天気の状況を写真やコメントで投稿することで、より正確な天気情報を作るという、参加型の双方向ネットワークを特徴としています。
2024年5月期の連結売上高は約222億円でこのうち、法人向けが53%、個人向けが47%とほぼ半分ずつの売上比率となっています。世界21か国に30の拠点を持ち、24時間365日、海洋・航空・陸上・地象など多様な気象・海象データを収集・解析・予測しています。日本においては1.3万ヶ所の気象観測網を有しており、これは気象庁の観測地点1300ヶ所の10倍に当たる規模です。
気象予報企業から気候変動ソリューション企業へ
昨今、ウェザーニューズは、事業範囲を気象予測から、気候ソリューションへと拡大する方針を示しています。同社は従来から、船舶企業に対して安全性だけではなく、燃油消費も考慮した最適な航路の提案を行っています。これは燃料費の削減につながるソリューションとして評価されますが、顧客企業の環境意識の高まりとともに、温室効果ガス(GHG)の排出削減効果が評価されるようになってきました。また、船舶業界以外にも、電力会社向けの需要予測による予備電源の最適化提案や、流通企業向けの発注最適化による廃棄ロス削減提案なども行っており、ウェザーニューズ自身の開示によると、これらを合計したCO2の削減量は年間387万トンにのぼります。また、2030年までに世界で年間3800万トンを削減するという目標を掲げていますが、これは2030年日本のCO2排出削減目標の6%に相当する量です。
同社は気候ソリューションとしてGHG排出削減だけでなく、台風や洪水被害などの物理リスクを軽減するためのソリューションを企業に提供しています。これは、気候パターンなどからリスクを分析し、洪水による操業停止の可能性など、企業の財務インパクトを推計した上で、日々の気象モニタリングでリスクを回避することをサポートするというサービスです。
気候変動の緩和と気候変動への適応という、両面に対して効果的なソリューションを有している点が同社の特徴であり、今後の事業発展の可能性を感じる部分です。
対話
カディラではウェザーニューズと継続的に対話を行っています。2024年7月には就任直後の石橋社長とミーティングを行い、新体制における経営方針について意見交換を行いました。同社は個人向けアプリを通じて、ユーザーから一日平均20万件の天気情報の投稿を集めており、このユーザー参加型の仕組みによって、他にない気象情報を収集する体制を構築しています。石橋社長からは、同社が長年構築してきたコミュニティマネジメントのノウハウを活用して、法人向けでもユーザーから情報を集めることで、より良い気象情報サービスを提供するという方針が説明されました。また、従来の法人顧客はインフラ系の大組織でしたが、小売店などの中小企業に対してもサービスを提供できるように、より低価格で使えるサービスの開発を進めるという方向性も示されました。
また、カディラでは、2025年6月にはウェザーニューズのサステナビリティ担当の安部執行役員とのミーティングを行いました。このミーティングでは同社の気候ソリューションなどサステナビリティの取り組みを中心とした意見交換であり、その場にカディラ以外の複数の機関投資家を招いて、協働対話の形式でミーティングを行いました。参加した投資家からはテクノロジー進化や、サービス開発の方向性、海外での事業ポテンシャルなど、多岐にわたる意見、質問が出されました。意見交換の中で、安部執行役員からは先進国では一般的になっている民間気象情報が、新興国においてルールも未整備な場合が多いとのことで、WMO(世界気象機関、World Meteorological Organization)などの国際機関とも連携してレギュレーション整備にも関与していく方針が示されました。
カディラでは同社が気象・気候分野において、実績と先進性を兼ね揃えた企業であることを高く評価しています。また、新経営体制において、環境貢献と事業発展の両立に積極的な姿勢をなった点に着目し、引き続き対話を行っていく方針です。
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