2025/1/23

シスメックス株式会社との対話

今月はシスメックスについての概要と、カディラが同社と行っている対話内容についてご報告します。

シスメックスの企業概要

シスメックスは1968年に、音響機器メーカーの東亞特殊電機(現TOA)から独立する形で設立された、主に臨床検査分野における機器や試薬の開発・製造・販売を行う医療機器メーカーです。兵庫県神戸市に本社を構える同社は、血液検査、尿検査、免疫検査などの診断分野で世界的なリーダーとして知られています。シスメックスの事業は医療の中でも検査の領域に特化しており、その中でもレントゲンなどの体を直接検査する「生体検査」ではなく、体から採取した血液や尿などを検査する「検体検査」という分野を専門としています。シスメックスが製造・販売しているのは病院で採取した血液や尿を検査するための機器と、機器を使って検査する際に使われる診断薬であり、これらを一体提供することによってユーザーである病院に対して安心感を提供しています。

シスメックスの主力商品は血液検査用のヘマトロジー(血球計数装置)であり、同社はこの分野で世界トップのシェアを誇り、高い精度と信頼性で医療現場から評価を受けています。

ヘマトロジーは病気の早期発見、治療方針の決定などで、医療行為の基本的な部分を支える重要な役割を果たしています。すでに確立された基本的な検査方法であることから、新興国での医療普及の初期段階において需要の増加が見込まれます。また、検査機器の高度化を通じ、検査の精緻化や効率化を図ることで、先進国でも新たな需要掘り起こしの余地があるため、発展性の高い事業領域であると言えます。

シスメックスは技術力に加え、販売・サービス体制の整備を通じて強みを構築してきました。他社に先駆けて導入したIT活用による検査業務の効率化や、遠隔監視によるサービス品質向上などを実現したことが評価され、後発企業でありながら主力のヘマトロジーで世界シェア50%を超す、トップ企業の地位を確立するに至りました。グローバルに直販体制を構築しており、海外売上高比率は9割近くを占めています。

近年の事業動向

2020年以降、シスメックスの事業環境は大きな変化を迎えました。新型コロナウイルスの影響により、基礎的な医療体制の重要性が広く認識されるようになった一方で、同社にとって厳しい状況も生じました。特に中国市場では、中国製医療機器を優遇する政策やゼロコロナ政策による検査件数の減少が、成長にネガティブな影響を与えました。

2024年に入り、同社の事業は再び活性化しています。主な要因の一つは、ヘマトロジー分野における新製品「XRシリーズ」の投入です。この製品は2011年以来のフルモデルチェンジとして登場し、血液検査工程の作業効率を大幅に改善する機能を備えています。さらに、異常血球を自動判定する機能が強化され、熟練スタッフに依存しがちな業務フローからの脱却を可能にしました。これにより、既存の検査センターでは生産性が向上し、新興国のように熟練スタッフが不足している地域でも検査能力の向上に寄与しています。

加えて、血液凝固検査分野にも大きな変化がありました。同分野ではこれまで、ドイツのシーメンス社とエリアを分担し、シスメックスがアジア、シーメンスが欧米を担当していました。しかし、2024年には契約が見直され、このエリア分担が撤廃されました。その結果、シスメックスは欧米市場でも血液凝固検査分野の製品を直接販売できるようになり、事業拡大の可能性が高まっています。一方で、シーメンスにとって同分野は主力事業ではないため、アジア市場での拡販は限定的と予想されています。

このように、シスメックスは新製品の投入や戦略的提携の見直しを通じて、成長の新たなステージに進もうとしています。

カディラによる対話活動

カディラは、シスメックスとの継続的な対話を重視し、その一環として12月に神戸にある同社のソリューションセンターを訪問しました。ソリューションセンターでは、主力製品であるヘマトロジーの歴史や最新ソリューションが展示されており、実機を見ながら製品の提供価値や競争優位性についての説明を受けました。加えて、新規事業である手術ロボット「hinotori」に関するショールームも見学しました。現在、手術ロボット市場ではインテュイティブサージカル社の「ダビンチ」が先行しており、メディカロイドはこれに追随する立場です。見学会においては、実際に操作を体験させてもらいながら、ロボットアームの8軸構造や医師の操作性向上を追求した設計など、差別化についての施策が説明されました。

また、別日程ではオンラインミーティングを通じて、シスメックスの統合報告書に関するフィードバックを実施しました。シスメックスは投資家の意見を吸い上げることに熱心であり、このミーティングも同社からの要請によって行うこととなりました。

シスメックスの統合報告書では、経営のマテリアリティ(重要課題)を起点として、長期戦略や具体的な取り組みが企業価値向上につながる流れが示されています。これを見ると、同社が医療課題解決を通じた業績拡大や、環境負荷低減による資本コスト低減などを明確に意識していることが読み取れます。このような情報は同社のステークホルダーがこの構造を理解することで、一体感が生まれ、事業の推進力が高まります。カディラからは、このような情報は非常に有益であるという意見を伝えた上で、より分かりやすい開示になるよう、意見交換を行いました。

私たちはこのようなフィードバックが、事業活動と資本効率、さらには企業価値との関連性を確認する機会となり、従業員の意識統一や投資家とのコミュニケーションの改善に寄与すると考えています。今後もシスメックスが世界の医療体制整備に貢献しつつ、企業価値を向上することを期待し、対話を続ける方針です。

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