2024/11/29

インパクト志向金融宣言セミナーへの登壇報告

2024年10月4日に、インパクト志向金融宣言が主催するセミナーにカディラキャピタルマネジメントのCIOである清水裕が登壇しました。

セミナーの主催者であるインパクト志向金融宣言は、主に日本国内の金融機関が協同してインパクト志向の投融資の実践を進めていくイニシアティブです。

当セミナーは「インパクト投資から見える企業価値 ~上場企業の事例とインパクト投資家の視点~」と題して3部構成で行われ、CIOの清水は第二部のパネルディスカッションにパネリストの一人として登壇しました。同パネルディスカッションには、他にカチタス社長の新井氏、丸井グループ執行役員の塩田氏などの投資対象企業の役員も登壇しました。投資家と企業が対話をしている姿を多くの聴衆が目にする形であり、インベストメントチェーンにおける協調意識を高めることにつながる取り組みと言えるでしょう。

             

登壇企業との関係

カディラではパネルディスカッションに共演したカチタス、丸井グループの両社について、当セミナーが企画される以前からミーティングを重ねてきました。ミーティングでは事業の進捗確認はもちろん、それと並行してサステナビリティ関連の対話にも時間を費やしています。例えば非財務情報開示、インパクトロジックモデル、インパクトと企業価値の関係、などが具体的な議題となっています。

カディラでは企業とのIRミーティングにおいて、コーチングの考え方を取り入れています。つまりそれは、投資家側の要求を突きつけるのではなく、企業が目指す方向を明確にして、その実現をサポートするというアプローチです。

例えば、カチタス、丸井グループともにサステナビリティ開示へのフィードバックを求めていたことから、カディラ主催でサステナビリティやインパクトの専門家を幅広く招いて、協働のフィードバックミーティングを開催しました。ミーティングを経て両社ともフィードバックを反映して開示内容を改善させる活動に取り組んでいます。さらにカチタスからは改善した開示情報を幅広い投資家に伝えていきたいという要望があったことから、カディラから今回のセミナー事務局にカチタスを推薦し、登壇に至りました。

今後の取り組み

セミナーの中で、丸井グループ執行役員の塩田氏から、よい世界を作りたいという共通の目的を持って投資家と企業が対話するのであれば、「投資する側」「される側」という上下関係ではなく、対等な立場で対話することが大切だという意見が述べられ、その文脈で好事例としてカディラの名前が言及されました。これはカディラが実践しているコーチング型のミーティングが、企業に良い対話の場となっていることが確認できる一言であり、自分たちのアプローチへの自信を深めました。

今後はコーチング型のアプローチに、さらに専門性を加えて、より価値創造につながるようなエンゲージメントを行っていくことを目指しています。例えば、企業のインパクト管理や、それを事業推進につなげるためのブランディングなどについて、専門家との協力関係も構築しながら、より深い対話を行っていくことを検討しています。

(参考)パネルディスカッションでの質疑応答要約

モデレーターの質問(以下、Q):どのようにインパクトを加味した企業の評価を行っていますか?

カディラの回答(A):独自開発した「IIV(Impact Integrated Value)」という企業価値の計測モデルを用いて、インパクトを含む非財務情報を企業価値に組み込んでいます。インパクト投資の世界ではリスク、リターンに加えインパクトを含めた三次元で評価すると言われますが、これを企業価値という物差しで二次元に落とし込むことで、理解を容易にしています。私たちがインパクトに注目するのは、これが中長期的に良い社会の構築につながり、持続可能なパフォーマンスにつながると信じているからです。

Q. インパクト投資がどのようにリターンにつながると考えていますか?

A. リターンの源泉は「企業価値の向上」と「バリューギャップの解消」にあります。私たちは、企業が財務と非財務のバランスを取りながら企業価値を高めることを期待すると同時に、バリューギャップを見出すことができない割高な企業には投資しないという規律も重視しています。このような取り組みをエンゲージメント活動で後押しし、価値創出を促進することで良質な投資リターンを目指しています。

Q. 企業との対話について具体的な事例を教えてください。

A. インパクト評価の観点から、本日登壇しているカチタスや丸井グループとロジックモデルの作成などについて意見交換を行いました。加えて、IIVの計算結果を伝え、インパクトと企業価値の関係を、経営目線で一緒に考えるよう努めています。経営者に直接「御社の価値はこれくらいだ」と伝えるのは勇気が必要ですが、そのような対話が企業の気づきを促します。

Q. インパクト創出に積極的な企業はどのように評価されるべきですか?

A. キーワードは「コーポレートブランド」です。従来型のESGフレームワークはリスク管理の枠組みに馴染み、DCFモデルにおける割引率に影響を与えます。一方、インパクト創出はブランド価値の向上につながり、顧客や従業員との関係を強化します。これは将来のキャッシュフローにプラスの効果をもたらします。

Q. アセットオーナーからどのような意見をいただいていますか?

A. アセットオーナーからは、インパクトレポートへの期待が高まっています。私たちも発行に向けて準備を進めています。このレポートでは、投資先が創出するインパクトをまとめるだけでなく、私たち自身の貢献、すなわち「インベスターコントリビューション」を明示したいと考えています。具体的には、1対1の対話や他の投資家を巻き込んだフィードバックの共有、さらにセミナーやウェブサイトでの情報発信も重要です。アセットオーナーとの協力関係を構築することも重要な要素になります。

Q. 投資対象企業にどのようなことを期待していますか?

A. 投資対象企業には、積極的にファンドマネージャーやアナリストに質問していただきたいと考えています。カディラではIRミーティングの最後に「何か質問はありますか?」と尋ねるのですが、「特にありません」と言われると残念に思います。これは、採用面接で「質問はありますか?」と聞かれたときに「ありません」と答える応募者が採用されにくいのと同じです。企業からの質問は、私たちにとって新たな気づきを得るきっかけになり、インベスターコントリビューションの機会につながります。

Q. IIVモデルに対するアセットオーナーからのフィードバックについて教えてください。

A. IIVへの関心は非常に高いと感じています。投資家の中には、IIVについてだけで2時間にわたるミーティングをリクエストされた方もいます。IIVは良いモデルですが、まだ改善の余地が大きいため、社内外の方との対話を通じてモデルを進化させていきたいです。

Q. 企業は投資家に質問した方がいいとのことですが、質問する企業の評価は向上しますか?

A. フィードバックを積極的に求める企業は、今後の改善に対する期待感が高まります。将来の改善余地は、定性的な評価を通じて企業価値の向上にプラスの影響を与えます。

Q. 長期的な観点でのインパクト創出への期待が、目先の投資を難しくさせることはありますか?

A. 企業価値より市場価値が大幅に高い場合、その企業への投資は慎重になります。株価が推計した企業価値を大きく上回って上昇した場合は売却の判断も必要です。インパクト創出に対して伴走することは重要ですが、一方で運用には規律が求められます。このように、インパクトとリターンのバランスを取ることが重要だと考えています。

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