
カディラキャピタルマネジメントは「インベストメントチェーンを先へとつなぐ」というミッションを掲げて活動しています。ミッション遂行のためには社内外のステークホルダーとの協力関係が欠かせません。私たちは投資対象企業との対話など、活動内容を具体的に開示することで、ステークホルダーとの信頼関係を深めていくことを目指しています。
今月は以下の活動について報告します。
弁護士ドットコムについてご紹介します。
まず、沿革と事業内容を見てみましょう。弁護士ドットコムは法務関連のITサービスを提供する企業です。同社は2005年に弁護士のマーケティング支援の事業として創業されました。創業者の元榮太一郎氏は自身が弁護士であり、業界の非効率性を解消する目的で起業を行いました。日本では弁護士の紹介手数料を得ることは禁じられていることから収益獲得に苦戦して創業から8年間赤字が続いていました。その後、弁護士が有料課金をするとプロフィール枠を充実することができるという、マーケティング支援のビジネスモデルを確立したことで収支が改善し、2014年に株式上場を果たしました。
弁護士マーケティング支援でトップ企業となった同社は、次に契約作業の非効率性を解消したいというニーズに着目し、2015年に電子契約サービスの「クラウドサイン」を立ち上げました。企業の効率改善ニーズに合致したサービスとして成長を遂げた同サービスは、2020年のコロナ禍による電子契約需要の急拡大を受けて成長が加速しました。
足元では「リーガルブレイン」という名で新規のサービス展開を進めています。これはLLM(大規模言語モデル)を活用した、法務分野の業務効率化サービスです。法務分野に特化したChatGPTのような対話型AIツールの開発を進めていますが、法律は条文や判例など膨大な量の文章から該当する情報を見つける必要があるため、LLMを活用することで劇的に生産性が改善する余地を秘めています。リーガルブレインは2024年夏のサービスローンチに向けて開発が進められており、弁護士のみならず、企業内での法務部門もターゲットとしてサービス提供する方針で、更なる成長が期待されます。
続いて弁護士ドットコムが向き合っている社会課題を整理します。日本では「二割司法」という言葉があります。これは、必要とされる二割の人しか法務サービスにアクセスできていないということを意味しています。費用が高いことや弁護士の探し方がわからないことなどがその理由と考えられます。特に費用面で課題を抱えやすい低所得者層の方が、弁護士に相談できず泣き寝入り状態は格差を助長する要素になると言えます。
また、事業開発や企業買収などにおいては法律解釈が経営判断に重要な違いをもたらします。法務部門が単なる法令順守を超えて、戦略的な分野に十分なリソースを費やせるかどうかは、企業競争力に直結します。日本企業はしばしば海外での企業買収に失敗して大きな損失が発生することがありますが、法務部門を強化することは、このような事態を回避して国際競争力を高めることにつながります。
弁護士ドットコムが進める、弁護士へのアクセス性改善や、法務分野の生産性向上などの施策は、上記のような社会課題を解決することを目指しています。
最後に対話内容について紹介します。カディラキャピタルマネジメントは弁護士ドットコムの経営陣とのミーティングの中で、上記のような社会課題とそれを解決するための同社の取り組みについて、構造化した図を作成した上で意見交換を行いました。また、これらの活動内容について開示を充実させることで、より多くのステークホルダーとの関係を構築できるという意見を伝え、そのための手段の一つとして統合報告書の作成を提案しました。
なお、同社はまだ社歴が浅いこともあり、ガバナンス体制は改善の過程にあります。例えばジェンダーダイバーシティについては遅れ気味であり取締役会は全員男性です。しかし、2024年6月の株主総会では初めての女性取締役が候補としてあげられるなど、是正に取り組み始めており、今後更なる改善が期待されます。
サンウェルズについて、ご紹介します。同社は、パーキンソン病患者専門の施設を中心に介護事業を行なっています。
代表取締役社長の苗代氏が大病を患った経験から、病気や障害を持っている方をサポートしたいとの思いで、2006年に石川県金沢市に通所介護サービス提供会社として設立され、その後、訪問介護、グループホーム、老人ホームなど介護領域全般に業容を拡大しました。2019年にパーキンソン病専門の有料老人ホーム「PDハウス」を開設し、その後順調に新設を継続し、現在31施設を運営する主力事業となっています。
パーキンソン病は、脳内のドーパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変性疾患で、国の指定難病となっています。症状は多岐に渡り、世界的にも根治する治療法は確立されていませんが、適切なリハビリテーションや服薬により進行を遅らせることができる病気でもあります。但し、患者により症状や進行状況が異なることや同じ患者でも一日の中で症状が変化するなど治療や介護において、専門的な知識が必要となるものの、特化型の介護施設はあまりありません。同社は、専門医の監修したパーキンソン病に特化したリハビリプログラムを有し、神経内科専門の医師による訪問診療や24時間体制の看護・服薬管理ができる体制を整備しています。十分なケアが受けられていない患者が多い中、同社のサービスのニーズは非常に強く、5月に発表された中期計画では開設ペースを加速し、在宅療養者向けの訪問看護も開始すると発表しています。
カディラでは、同社との対話を継続する中で、特に、適切なケアを受けられていない軽度なパーキンソン病患者についてもサービス展開することは大きな社会的インパクトであると共に、同社の成長の柱となり得ることを伝達してきました。今般の訪問看護の開始については非常にポジティブに捉えています。介護ビジネスにおいては、特に人材確保がボトルネックとなっていますが、同社は、研修の充実や社内資格制度の導入、待遇面、テクノロジーの活用などにより労働環境を整備・改善することで、現状人的資本の不足にはなっていない模様です。実際、PDハウスの見学を行ない、施設長のお話もお伺いしましたが、当該施設のエリアでは介護職の求人倍率が非常に高い中でも、人材が確保できているという事でした。
カディラキャピタルマネジメントでは、5月下旬に金融庁を招き、金商法改正に関する勉強会を開催しました。この勉強会は主に新興資産運用会社を対象とし、資産運用会社に関する制度改正を主要テーマに企画されました。参加者は約40名で、金融庁からの説明の後、質疑応答の時間では参加者から活発な意見が出されました。
日本政府は「資産運用立国」の名の元に資産運用業界の活性化策を進めています。その中で課題認識の一つに国内の資産運用会社の数が少ないことが挙げられています。2021年末における国・地域別の資産運用会社の数を比較すると日本は405社で、アメリカ14806社、香港1979社、イギリス1100社(*1)などと比較して圧倒的に少ないことが見て取れます。そこで政府は新興資産運用会社の育成を重視し始めています。新興資産運用会社は新しい取り組みを行うのに適していますが、設立には相当な労力が必要です。そのため、参入意欲を高めるためのサポートが求められます。
今回の金商法改正では、資本金基準の引き下げやアウトソーシングの活用範囲拡大が盛り込まれており、初期投資や固定費を引き下げることで、資産運用会社の設立が以前より容易になります。また、新興資産運用会社は実績がないため顧客獲得が難しいという問題がありますが、今夏に公表予定のアセットオーナープリンシプルでは、業歴が短いことだけを理由に新興運用会社を排除しない仕組みが検討されています。
これらの施策によって、新興運用会社の活用が広がる可能性があります。また、勉強会の中では、新興運用会社が積極的に関与するための横連携を強化する仕組みを構築する案も提案されました。
*1 金融庁「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」
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