2025/9/26

サステナビリティ戦略を支える協働対話 ― コクヨとの事例

カディラは、投資先企業との協働対話を通じて、サステナビリティを軸とした持続的成長を支援しています。コクヨ株式会社との対話では、経営理念とサステナビリティ戦略の整合性や、社会課題解決と事業成長の結びつきなどを議論しました。本事例は、企業と投資家が協働することで生まれる新たな価値創造の一例です。

企業概要

コクヨは1905年に創業された、文具(ステーショナリー)とオフィス家具(ファニチャー)を主力とする企業です。創業者・黒田善太郎氏が帳簿の製造から事業を始め、その基盤をもとにノートやファイルなどへと展開し、文具の総合メーカーとして製造・販売体制を整えてきました。さらに1965年にはファニチャー事業に参入し、現在では日本のオフィス家具市場の主要企業の一社となっています。

現在コクヨの主力はファニチャー事業で営業利益の7割を稼いでいます。リーマンショック後の2009年には全社利益も損益トントンまで落ち込み、その主要因としてファニチャー部門が36億円の赤字となりましたが、その後の構造改革を経て、2024年には営業利益率14%、230億円の利益を生む体制となっています。改革の柱は、単なる家具の納入から、自らオフィスの企画・設計を担うソリューション型ビジネスへの転換です。これにより受注率や生産効率が高まり、利益率も向上しました。さらに、日本全体で「働き方改革」を背景にオフィスの生産性改善ニーズが強まっており、こうした環境変化がコクヨの成長を後押ししています。

特にコロナパンデミックの終息を機に、在宅勤務中心から出社中心の勤務形態への回帰を促し、従業員エンゲージメントを高めようとする企業が増えており、その場合は過ごしやすいオフィス空間の整備が、競争力強化の「戦略投資」と見なされるようになり、付加価値の高い提案が求められるようになっています。また、日本においては人口減少により、特に若年層の採用競争が激しさを増しています。闇雲に採用広告を出すだけではなく、オフィス空間も含めた魅力的な職場環境を整備して、採用確率を高めることもトータルの人事戦略として必要性が高まっています。

自律的な社会課題解決の場作り

コクヨは「自律協働社会」というコンセプトで、より良い社会と自社の発展を両立することを目指しています。日本では数年前まで画一的なオフィスが当たり前でしたが、コクヨは早くから自社でフリーアドレスを導入して、それをショーケースとして顧客に見せることで、自由度の高いオフィス空間の提案を行ってきました。コクヨが中長期的に成し遂げようとしていることの一つに、自律した個を育み、協働を促す場を作ることで、社会課題が解決される続ける仕組み作りに貢献するという方針があります。最新の統合報告書では、この点について詳しい説明がなされており、次の6つのKPI項目を計測する方針も示されています。①自分らしい働く・学ぶ・暮らすを考える機会の増加、②協働する場や地域、コミュニティに参加する人の増加、③社会から減らすバリアの種類、④共創が上手くいくチームの増加、⑤社会課題の解決に取り組む人の増加、⑥社会課題の解決に貢献する商品の増加

これらのKPIは事業へのプラス影響はやや曖昧な感はありますが、コクヨが考えるオフィス空間の新たな価値を体現するものと考えられます。フリーアドレスがそうであったように、当初は顧客の理解を得られなかったとしても、先進的な提案の事例を積み上げることが、提案力の底上げやブランド力の強化につながり、最終的には同社の競争力につながることが期待されます。

カディラによるコクヨとの対話

カディラではコクヨと継続的に対話を行っています。CIOの清水は前職時代からコクヨと対話をおこなってきました。以前はPBRが1倍を割れていた中で、経営の基礎固めを行う時期だったため、買収防衛策の廃止、資本効率の改善、非財務情報の開示などを促してきました。コクヨはそれらを着実に実施して経営品質を高め、それと相まって前述のとおりファニチャー事業の成長もあったことから過去3年で株価が倍となり、PBRは1.5倍程度に上昇しました。極端な割安状態から脱した次の展開としては、中長期的な成長シナリオを明確にして、市場からの評価を更に高めることに挑戦していくことが求められます。

2025年8月には、コクヨの次なる挑戦をサポートするため、カディラ主催で、複数の機関投資家を招いてコクヨとの協働対話ミーティングを設定して、サステナビリティやインパクトの視点を中心とした意見交換を実施しました。ミーティングにおいては機関投資家からコクヨに対して「インパクトと経営理念との整合性」、「インパクトとビジネスとの結びつき」、「サステナビリティ活動の進捗の開示」、「若年層へのサステナビリティ教育への関与」、「サプライヤーへのエンゲージメント」など、多数の意見やアドバイスがなされました。コクヨ側からは、投資家の意見を聞く良い機会となり、これらを経営に生かすことが大事であるというコメントがなされました。

コクヨはサステナビリティの観点以外にも、海外展開や、更なる資本効率改善など、様々な改善要素を秘めています。カディラでは今後も継続的に対話を行い、同社の価値向上を側面支援していく方針です。

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