2024/5/24

活動報告(2024年4月)

カディラキャピタルマネジメントは「インベストメントチェーンを先へとつなぐ」というミッションを掲げて活動しています。ミッション遂行のためには社内外のステークホルダーとの協力関係が欠かせません。私たちは投資対象企業との対話など、活動内容を具体的に開示することで、ステークホルダーとの信頼関係を深めていくことを目指しています。

今月は以下の活動について報告します。

住信SBIネット銀行との対話

今回は住信SBIネット銀行(以下、住信SBI)について紹介します。

住信SBIは三井住友信託銀行(以下、SMTB)とSBIホールディングス(以下、SBI)がそれぞれ34%出資する企業です。もともとは信託銀行の事務受託の企業として設立されましたが、2006年にSBIホールディングスが出資をし、2007年から銀行としての事業を開始しました。オンライン銀行として成長を続け、約1年前の2023年3月に株式を上場しました。

私たちの関心を住信SBIに強く引き寄せたのは、同社のトップメッセージです。

テクノロジーと公正の精神で、豊かさが循環する社会を創っていく。

なぜ、テクノロジーは進化し続けるのか。それは、富の偏在を、拡大させていくためではない。独占を、創出するためでもない。意思あるすべての人に機会が恵まれ多種多様な躍動が溢れ、暮らしの中に豊かさが循環していく。そのためだけに、テクノロジーは存在するべきだ。と、私たちは考えます。

銀行の存在意義そのものである、公共の精神を、 公正の精神を私たちの存在意義として受け継いでいく。独占から、公正な競争へ。豊かさが、循環する社会へ。創造と変革のDNA、そしてテクノロジーと公正の精神に基づき、豊かさが一人ひとりに行き渡っていくインフラを創っていきます。

破壊を恐れない、勇気を持って。

代表取締役社長(CEO) 円山 法昭

テクノロジーや金融の発展は世の中を便利にしますが、用心しないと格差の増幅という副作用を生み出してしまいます。この点について経営トップが課題認識を強く持っている住信SBIはどのような企業なのでしょうか。

住信SBIはオンライン銀行としてのコスト競争力やITシステム構築力を優位性に、主力の住宅ローン市場において新規実行額でトップ(同社推定の2023年シェアは7.4%)となっています。同社は高い業務効率によって競争力のあるローン金利を実現して顧客獲得を進めています。また、対面積極などサービス面を充実することによって、無闇に金利競争に陥ることを避ける戦略を取っています。同社は市場シェアを25年に10%、その先20%へと高めていくことで成長を続ける方針を示しています。また、金利が上昇すれば利益水準が高まる事業構造のため、現在の金利の上昇傾向は同社の利益見通しとって良好な環境であると言えます。

対面接客において重要な役割を果たすのがパートナー企業との関係です。住信SBIはすでに顧客との接点を有している企業に銀行機能を提供するBaaS(Bank as a Service)というビジネス形態によって銀行機能を提供しています。例えば、日本航空、髙島屋、ヤマダ電機などが同社とパートナー関係を有しています。住信SBI自身が店舗を有していないことから、裏方に徹する形で良好なパートナー関係を築くことができています。

また、法人口座の伸びも堅調です。過去3年平均で法人口座数は35%の成長をしています。同社の法人におけるサービスの強みは口座開設スピード、シンプルな融資審査、モバイルアプリの利便性などがあります。実際に新興企業の経営者から、大手銀行では口座開設に非常に時間がかかり、住信SBIの素早い審査によって救われたという意見も聞かれました。

投資家の観点で住信SBIを見る場合に、二つの点に気を付ける必要があります。一つは親子上場について、もう一つは新規上場(IPO)から日が浅いことです。

まず親子上場についてですが、カディラキャピタルマネジメントでは、大株主が上場企業である、すなわち親子上場の「子会社」に当たる企業については、投資検討を慎重に行うようにしています。その最大の理由はガバナンス面での脆弱さが懸念されるためです。例えば、親会社が自社の利益を最優先し、少数株主の利益を犠牲にするようなことが起こるかもしれません。また子会社側の経営陣が、親会社からの天下り人事で配属になった場合には、上場企業の経営を担う能力が欠如している場合もあります。

住信SBIにおいては、上記の点については過度な懸念は不要であると思われます。株主構成においては、SMTBとSBIが同額出資しているため、どちらか一方が自社の利益のみを優先することが難しい仕組みとなっています。むしろ、伝統的な企業であるSMTBと成長志向の強いSBIがうまくバランスをとることで、ガバナンス体制と事業推進力を兼ね備えた体制が構築されていることが経営にポジティブに作用している面もうかがえます。

また、現在の経営トップ、円山法昭社長は、2000年代前半にSBIグループ内でローン比較サイトやモーゲージバンクなどの事業立ち上げに関与し、2014年から住信SBIの社長を務めています。事業の立ち上げと成長の経験を有しており、実際に過去10年にわたって住信SBIの経営を担い成長モデルを構築してきた手腕は評価に値します。

次にIPO直後であることについてですが、そのような企業については、過去のデータが少ないため、通常の株式と比較して調査が難しい場合があります。また、株主構成が安定していないことから値動きの変動幅が大きくなるリスクもあります。そのような中でも経営陣が有能で、ビジネスモデルの優位性があり、世の中にポジティブな影響を与えているような企業が、何らかの理由で市場での価値が低い場合、それは非常に良い投資機会になります。住信SBIの場合はすでに企業として強固な事業基盤が作られており、ディスクローズもしっかりしていることから投資検討に値すると判断できます。

カディラでは住信SBIのIRチームが情報収集に前向きである点をポジティブに評価しています。私たちから、同社のパートナー企業の店舗を見学したいと要請したところ、即座にそのアレンジを行ってくれました。当日はIR担当役員も同行の上、訪問した店舗の販売責任者の意見を積極的に収集する姿勢を示していました。投資家の要請に対する対応の早さも、現場訪問の機会を自社の改善につなげる態度も、同社が健全な危機意識を持って業務を遂行していることを示す事例であると感じられました。

また、カディラでは住信SBIに対してサステナビリティ対応の強化を要請しています。同社はすでにウェブサイトでは一定の開示を行っていますが、まだ体系立てた開示とはなっていません。会社側はこの点について強い問題意識を持っており、開示の強化を進めることを明言しています。その際には、単にESGリスクを列記するのではなく、同社が生み出しているポジティブインパクトについても整理が進められているとのことであり、開示を待って更なる対話を行いたいと考えています。

三菱総合研究所との対話

三菱総合研究所(MRI)と未来共創イニシアティブ(ICF)が開催した「MRI DEMO DAY2024」(DEMO)に参加をしました。世の中がインパクト志向になるという観点から、とてもユニークなイベントでしたので、ご紹介させて頂きます。

MRIは、1970年に三菱グループ各社が出資して設立された日本におけるシンクタンクの先駆けの会社であり、現在はシンクタンク・コンサルティングサービスとITサービスがビジネスの2本柱となっています。シンクタンク・コンサルティングは官公庁向けに強みがあり、ITサービスは金融、カード向けを軸に展開しています。官公庁向けで培った知見を生かした官民共創ソリューションや、卸電力取引向けなどストック型ビジネスの開発、収益化に注力しています。当社は目指す姿として「『100億人・ 100歳時代』の豊かで持続可能な社会の実現」を掲げ、事業を通じた社会課題解決を目指しています。その実現に向けて、社会価値・非財務価値・財務価値の3つの価値を循環・拡大していくサステナブル経営を推進しており、インパクト志向の非常に強いビジネスモデルとなっています。

またICFとは、革新的技術の活用とオープンイノベーションによって、社会課題をビジネスで解決することを目指して活動しているMRIが運営する会員組織であり、6分野に分類された社会課題31テーマを設定し、活動の起点としています。そして社会課題の解決策をマルチステークホルダーで共創・社会実装し、コレクティブインパクトを創出することを目指しています。

今回のDEMOでは、MRIが取り組んできた共創事例を含め、社会課題を起点にして各企業が活動を行ない、より大きな社会的インパクトを創り出す様々な試みが紹介されました。当日はリアル・オンライン合わせて、400名以上の方が参加し、パートナー探しやイノベーション創出の学びの場ともなっていた様で、とても熱気がありました。

いかに社会的インパクトを生み出すか、という観点でスタートアップから大企業まで連携しているケースが参考になるとともに、MRI及びICFの様々な角度からの関与や支援が各企業単体の取り組みでは実現が難しい課題の解決に貢献していると実感しました。これらの活動は、DEMOへの参加企業がセオリーオブチェンジを考慮する際の重要な要素になり得るとカディラでは考えています。

こうしたイベントへの参加やそのフィードバックなどを含めて、カディラでは、MRIと定期的に対話を行なっていますが、同社がシンクタンクとして社会課題解決につながる提言からコンサルティングやITサービスを通じて社会実装まで一貫して取り組むポジショニングや社会価値の実現に向けた取り組みを評価すると共に、これらの活動が企業価値の向上に結び付く事や社会価値のKPIについての説明が強化されることを期待しています。

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