
2024年4月29日に円ドルレートが160円になりました。これは34年ぶりの円安水準です。物価が2%上昇する中、日本銀行は政策金利を拙速には引き上げないという方向性を示していることが円安圧力となっていると見ることができます。
通貨を指数化した実質実効為替レートを見ると、今の為替水準は1973年の変動相場制移行以来、最も円安が進んでいる状況です。2024年3月末時点の実質実効為替レートは70.94で、過去ピークだった1995年4月の194.15から右肩下がりが続いています。特に2021年以降に下落ペースが加速し、2021年1月から2024年3月の3年2ヶ月で27%の下落となりました。
ドル円の二通貨間の関係を見てみると、割安度合いを見ることができます。2024年1月末時点で消費者物価ベースの購買力平価の価値は1ドル108.02円(1円0.926セント)ですが、実質相場は146.92円(0.681セント)ですので、円はドルに対して26.5%も割安な水準となっています。ドルを持参して日本に来るとかなり割安感を感じられる状況であるため、外国人観光客の増加が顕著なこともうなずけます。ちなみに1995年4月時点では実質相場が83.53円、購買力平価が197.90円だったため、2.4倍も割高な水準でした。輸出価格は実質相場、コストは購買力平価に近いと考えると、コスト197円、売価83円ですので到底儲かる水準ではありません。日本は輸出競争力を失い、製造拠点の国外移転や、徹底的なコスト削減を行わざるを得ない状況となりました。
円安が進めば、日本経済にはいくつかのプラスの効果が期待されます。一番大きな影響は輸出型企業の収益拡大です。また、製造業の日本回帰・日本シフトが起き始めており、地域経済の活性化を促すことが期待されます。人口減少下の日本では人手をかけた大量生産には適さないため、高付加価値型の産業への転換も進むでしょう。TSMCが日本の熊本に半導体製造拠点を設立したことは、象徴的な出来事と言えます。熊本県の2020年の名目GDPは6.1兆円ですが、九州フィナンシャルグループによるとTSMC進出を起点とした10年間の経済効果は6.9兆円(うちGDP影響3.4兆円)と推計されており、影響の大きさが伺えます。
一方で、円安は円資産の目減りや、輸入物価の上昇などのネガティブな影響も引き起こします。輸入品販売の小売業などポジショニングの悪い企業は、業績悪化リスクが高まります。また、円安による輸入価格の上昇が物価上昇に拍車をかけると、国民の不満が高まります。政府支持率はすでに20%台と低水準であるため、不満の高まりが政局不安につながるリスクがある点は注意が必要でしょう。
なお、カディラは、一つ一つの企業のファンダメンタルズ分析を通じた投資判断の積み重ねによってポートフォリオを構築します。よって為替相場の変動に対するアプローチにおいても、為替のトレンドを予測してポートフォリオ全体を調整するようなトップダウン型のアプローチは採用せず、企業収益への影響を分析することに注力してまいります。
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