
日本における設備投資の拡大基調が続いています。法人企業統計(金融・保険業除く)の設備投資額を過去から遡って見ると、2007年1~3月の過去最高額以降、金融危機や東日本大震災などを経て長い下落局面となりました。2013年にようやく底を打った後は回復基調に入り、2020年から21年のコロナ禍影響を除くと一貫して上昇が続いており、直近の2024年1~3月は、史上2番目に高い水準まで回復を遂げました。
貿易紛争やパンデミックを経て、サプライチェーンの安定化志向が高まっていることや、歴史的な円安による価格競争力の回復などを要因に、日本企業が国内生産を強化していることが足元の設備投資増加の要因と考えられます。また、デフレ経済からの脱却を受けて、企業が前向きな投資を増やし始めていることもその要因です。例えば自動車業界は電気自動車関連への投資を増加させて全体を牽引しています。
製造業の投資が増えることは地域経済にとってプラスの影響をもたらします。地域間格差の拡大とそれによる地方の過疎化進展は日本における主要な社会課題であることから、この是正につながる流れは歓迎すべきことでしょう。
このような状況下、カディラキャピタルマネジメントの運用担当者は日本の地方経済の状況を確認すべく、7月に九州に調査視察に訪問しました。九州に訪問したのはTSMCの工場新設をきっかけとした現地の状況の変化を確認することが主な目的の視察です。
TSMCは2021年に日本での半導体工場新設を発表し、ソニーグループやデンソー、トヨタ自動車などと合弁で「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社」(JASM)を熊本県に設立しました。工場建設地は「くまもとセミコンテクノパーク」としてもともとソニー系や東京エレクトロンなどの半導体関連工場が集積していた場所ですが、TSMCの進出によって産業集積が加速しています。くまもとセミコンテクノパークが立地するエリアは地価上昇率が全国トップになるなど、TSMC進出は地元の経済や社会に非常に大きな影響を与えています。JASMは第二工場建設計画を正式に発表したばかりですが、地元では第三工場や第四工場など更なる工場建設の可能性が噂されています。すでに求人や交通量の増加などが見られており、人材サービスやインフラ建設など、関連業界への波及効果が発生しています。半導体産業集積による今後10年の経済波及効果は熊本県だけで6.9兆円(1)、九州・沖縄では20.1兆円(2)と見込まれています。熊本の県内総生産6.8兆円(3)、九州・沖縄の実質域内総生産53.9兆円(4)と比較すると、その影響の大きさが伺えます。
なお、北海道でも日本企業8社の共同出資により設立された半導体会社「ラピダス」の工場建設が進んでいますが、その波及効果は2023年からの14年で最大18.8兆円(5)と名目道内総生産19.7兆円(6)に匹敵する規模が見込まれています。九州や北海道で生まれつつある地域活性化策に刺激されて他の地域でも独自の成長シナリオが描かれるようになれば、日本全体が活性化するシナリオが期待されます。これは日本の地域間格差を是正することで社会安定をもたらすとともに、新たな投資機会を生み出すという点で注目に値します。
*1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/7180/ir_material32/212938/00.pdf
*2 https://www.fukuoka-fg.com/investorimage/data/20240528_ir.pdf
*3 eac49bc4991af4a1acaf1622ee1a3124.pdf (reri.or.jp)
*5 894c9449748e9077be93f64c6cce0cd5-1.pdf (anic-hokkaido.jp)
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