2025/3/21

AI投資の加速とその影響

ハイパースケーラーによる巨額AI投資

ハイパースケーラーと呼ばれるグローバル大手IT各社がAI投資を積極的に行っています。マイクロソフトは2025年6月までに800億ドル(1ドル150円換算で12兆円)、アマゾンは今年1000億ドル(15兆円)、メタは今年650億ドル(9.8兆円)、アップルは今後4年で5000億ドル(75兆円)などの発表がなされています。

日本企業のソフトバンクグループが中心となるStargate Projectも、その一例です。Stargate Projectは、OpenAIのために新たなAIインフラストラクチャを米国内で構築することを目的とした新会社で、今後4年間で5000億ドル(75兆円)を投資する計画を発表しました。StargateのリードパートナーはソフトバンクグループとOpenAIであり、ソフトバンクグループは財務管理を担当し、プロジェクトのトップには孫正義氏が就任します。

データセンター業界の上位企業の投資計画を見ると、エクイニクスの24年第三四半期からの3か年の投資計画が44億ドル(6600億円)、NTTグループの2023年から 5年間の投資計画が1.5兆円となっています。これらの企業の投資計画は主に施設整備費で、中に設置するAIサーバーなどが含まれない前提と考えられるため、上述した投資額とは基準が違いますが、それを踏まえてもハイパースケーラーの投資計画が桁違いに大きいことが確認できます。

ハイパースケーラーの投資額の多くがAIチップの購入に向かうと考えられますが、半導体の市場規模が年間6000億ドル(90兆円)程度であることを考えると、発表されている投資計画が今までの常識では捉えられない規模に膨らんでいることがわかります。

AI投資の社会的・経済的影響

これ程の巨額投資を各社が一斉に行えば、社会システムに大きな変化を生じさせることは間違いないでしょう。サステナビリティの観点で言えば、AI関連への投資が加速すれば、それに応じて使用される電力量が大きくなることや、AI倫理の問題が複雑化することなど、環境・社会に対して負の側面が高まることが予想されるため、リスク管理の観点でしっかりとした議論が必要です。また、経済性の観点で言えば、世界の株式市場を支えている大手企業がこぞって同じ分野に投資を行い、もしこれらの投資が期待どおりのリターンを生まなければ、世界経済全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。このリスクを考慮し、適切なシナリオを想定しておくことが重要です。

一方で、大きな変化が社会をより良くする可能性もあります。リスクばかりに目を向けて、機会を逃すことがないよう、投資家としてはは常に前向きな姿勢で変化を捉えることも必要です。

日本株への影響

AI投資が世界の有り様を変化させるとして、その場合は日本株ではどのような分野が有望でしょうか。直接的に影響を受けるのはハイパースケーラーの投資の対象となる半導体や電力設備関連の企業であり、日本企業では半導体製造装置や半導体材料、光ファイバー部品などの分野で技術力の高い企業があります。

では、さらにその先、AI投資が行われて、実際にそれらが活用されるようになる場合、どのような事業機会を想定すべきでしょうか。そのヒントは上述したソフトバンクグループの動きにあります。

ソフトバンクグループはOpenAIと、企業向け最先端AI「クリスタル・インテリジェンス」の開発・販売を目的としたパートナーシップを発表しました。ソフトバンクグループは年間30億ドル(4500億円)を支払うことで、このAIを日本で独占的に使う権利を得て、それを企業向けのITソリューションとして活用する方針です。

事業推進にあたり、同社はまずグループ内各社で活用し、その後外販するというシナリオを描いています。一例として挙げられているのはシステム開発の効率化です。ソフトバンクのグループ内には約2500の基幹システムがありますが、その全てAIに学習させることで、システムの保守や追加開発の効率化が期待されます。ITシステムの開発が短納期化、低コスト化されると、組織改編や新商品開発の意思決定が行いやすくなるため、経営判断のスピードが上がり、企業競争力が高まるということになります。

この点を通じて注目すべき点は、まずソフトバンクグループの支払額の大きさです。ソフトバンクの年間の当期利益は市場コンセンサスで6300億円程度と見られており、OpenAIの2024年の損失が50億ドル(7500億円)とされているため、30億ドル(4500億円)の支払いは両社の損益に大きな影響を及ぼします。

クリスタル・インテリジェンスが企業経営にもたらしうる影響

仮にクリスタル・インテリジェンスのソリューションがうまく立ち上がると、企業経営に大きな変化が起きるでしょう。古いシステムの刷新が低コストでできることになれば、保守コストの低下はもちろん、経営全体を再構築しやすくなります。また、新規事業開発にもプラスに働くことでしょう。例えば、電話会社が料金プランを変える場合にもシステム対応が必要になりますが、システム更改のスピードが速くなればサービス刷新のスピードも向上します。つまり、クリスタルを導入した企業が急速に競争力を高めるというシナリオが想定されます。

一方で古いシステムの保守を行っている事業者にとっては失注リスクが高まるため注意が必要です。また、BPOセンターのような事務作業の事業者にとっても、業務そのものが消失するリスクが高まる可能性があります。また、競合他社に対してこのようなシステムの導入が遅れた場合、競争上不利な状況になるというリスクがあります。ソフトバンクグループはクリスタルの日本における外販について一業種一社ずつ始める計画であるため、クリスタルが本当にうまく立ち上がり、競合他社が同様のソリューションを提供するのに時間がかかるとすれば、その間に同業種における企業間の競争力の差が大きく生じるという可能性も考えられます。

これらの状況はまだ不確定要素が多く、メインシナリオとして織り込むには時期尚早であるため、現時点でカディラとしてソフトバンクグループやその上場子会社については投資を行っていません。しかし、その動向を注視すべきと考え、入念に調査を進めていく方針です。

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