2024/7/26

インパクトIPOの現状と課題  

カディラキャピタルマネジメントでは、「インパクトIPO」として昨年上場した企業2社とミーティングを行ないました。対話内容も踏まえてインパクトIPOの現状や課題について整理します。

インパクトIPOは、一般財団法人・社会変革推進財団の「インパクトIPO実現・普及に向けた基礎調査」によると、以下のように定義されています。

「インパクトIPOとは、①ポジティブなインパクトの創出を意図している企業が、インパクトの測定およびそのマネジメント(Impact Measurement & Management, IMM)を適切に実施していることを示しながら、IPOを実現すること。さらに、②IPOに際して、インパクトの追求とIMMを継続的に実施できるよう、当該企業を取り巻くステイクホルダーに対して、インパクトおよびIMMの状況を説明し、インパクト志向の資金提供者からの資金調達をめざすことで、企業価値の向上を図ることである。」

これまでにもSDGsIPOとして上場する企業もあり、社会課題解決への貢献を直接の目的に資金調達をする事は同様であるものの、インパクトIPOは、インパクト創出の意図をもって、その測定や管理を行なっている点が違いと言えそうです。

さて、Dealroom社の調べによれば、グローバルでは256社のインパクト・ユニコーン企業が存在し、2017年末の32社から比べるとその社数は7倍以上に増加しています。調査開始以来21社がIPOを行なっているとの事で、グローバルでは時価総額が10億ドル以上のユニコーン企業が数多く存在し、また増加傾向であることからインパクトIPOは非常に活性化してきていると言えそうです。

一方、日本でも、先述2社のインパクトIPO実現、インパクトスタートアップ協会の会員企業の増加、インパクト投資を行なうベンチャーキャピタル(以下、インパクトVC)の資金調達額の増加など、インパクトIPO拡大に向けた兆しを感じることが出来ます。更に、インパクト投資の拡大を目的としているGSG(https://gsgii.org/)の国内諮問委員会が、本年5月に「インパクト企業の資本市場における情報開示及び対話のためのガイダンス」を公表するなど、インパクト企業と資本市場関係者の間において共通理解を醸成し、建設的な対話を促す土台整備が進んでいます。

カディラでは本格的にインパクトIPOが拡大するには、特に上場投資家がよりインパクト志向となるかどうかがポイントと考えています。上述したインパクトIPOの2社はともに、ミッションドリブンかつ言行一致であることに加え、インパクトKPIを明確に設定するなど非常にユニークな取り組みを行っていることから会社が目指す方向性に期待が持てます。しかし、これら2社に共通して見える課題として、上場前からの株主とは異なり、上場株の投資家との対話においてはインパクトが議題になることは余りないということです。投資家の意見は経営に影響を及ぼします。つまり、上場によって投資家層が変化することで、企業のインパクト創出に向けた取り組みが減速してしまう懸念があると言う事です。

国際金融公社(IFC)が定めた「インパクト投資の運用原則(OPIM)」においてはResponsible exit(責任ある投資終了)が求められています。これは、インパクト投資家が投資先企業の売却を行なう際に売却価格のみならず、当該企業のミッションやビジョンを理解し、持続的なインパクト創出や経済的価値の実現に伴走できる買い手を見つける必要があるというものです。この点からしても、インパクトについて精通した上場投資家の存在がなければ健全なインパクトIPOは成り立ちにくいと考えられます。

先の2社はまだまだ時価総額の規模が小さいのですが、上場予備軍に目を向けると日本でもユニコーン級のインパクト企業が育ってきており、これらの企業のIPOが実現すると、インパクト投資に対しての注目度は高まることが想定されます。その際に、市場が健全に発展していくためには、上場株投資家、ベンチャーキャピタル、インパクト企業、などの認識のすり合わせが必要です。カディラでは、これらの市場関係者と対話を行い、共通理解の醸成に貢献してまいります。また、責任あるエグジットの受け皿になることで、インパクト企業をサポートすることも投資戦略の一つとして検討してまいります。

 

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