2025/4/18

親子上場構造への投資視点─新たな投資機会

日本におけるコーポレートガバナンス改善に向けた動きは、着実に進展しています。東京証券取引所はこれまでも、親子関係や持分法適用関係にある上場会社を対象に、グループ経営の在り方や少数株主保護に関する取組みとその情報開示を要請してきました。2023年12月には「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」という資料が公表され(1)、さらに2025年2月には、「親子上場等に関する投資者の目線」という資料が発表されました(2)。後者では、投資家側の意見を取りまとめ、企業の情報開示や対応において不足している点を整理しています。これらを踏まえ、2025年秋頃には、各社の開示状況や追加的な施策について、東京証券取引所より新たな発表が行われる予定です。

2024年時点で、上場子会社は230社にのぼり、上場企業全体の6.0%を占めています。また、20~50%の持株比率を有する大株主が存在する上場企業は987社、全体の25.8%を占めており、依然として日本市場においては親子上場・資本関係の深い企業が一定の割合を占めています(3)。

従来、カディラでは親子上場に関連する企業はガバナンス構造上の問題が多いと考え、慎重な投資スタンスをとっていました。例えば、日本電気(NEC)は、過去にソフトウェア開発子会社を上場させた後、2005年5月にTOB(株式公開買付け)を通じて再び完全子会社化を行った事例があります。この時は二社同時にTOBを行いましたが、当時これら子会社の株価は上場以降ほぼ右肩下がりで推移し、TOB発表時点では、一社は上場時から約65%、もう一社は約54%の株価下落となっていました。両社とも、NECからのシステム開発受注を主要事業としており、その関係性が株価下落と再度の完全子会社化につながったと見る向きもありました。穿った見方をすれば、NECが発注条件を意図的に厳しくし、子会社の収益を圧縮した上で、株価が低迷したタイミングでTOBを行ったとも解釈できる状況でした。

その後、約20年が経過し、国を挙げたコーポレートガバナンス改革の取り組みが進んだことで、日本企業を取り巻くガバナンス環境は大きく改善しています。仮に現在、同様の取引が行われた場合、投資家や社会からの厳しい批判にさらされ、企業ブランドやステークホルダーとの関係性において重大なリスクとなることが想定されます。また、機関投資家による経営監視の意識が高まったことにより、親子上場や株式持合いなど、日本市場に特有の株式保有形態についても、経済合理性や株主利益保護の観点から企業に説明責任が求められるようになっています。

親子上場を継続したい企業は、これまで以上に株主価値向上策を具体的に示す必要があり、それが叶わない場合は、資本構成の見直しや新たなガバナンス構造への移行を求められる圧力が高まっています。現在の親会社がベストオーナーではないと判断される場合は子会社が売却される形になりますが、その結果として親会社の事業ポートフォリオの改善や、子会社の経営自由度の向上などがあった場合、親子両企業ともに株価ディスカウント要因が解消する可能性があるため注目すべき分野です。東京証券取引所による情報開示要請の強化は、これらの流れを加速させるきっかけとなりうるため、親子上場企業群のガバナンス改善を通じた企業価値向上のシナリオが期待できる環境が整いつつあります。当社としては、これまでの慎重なスタンスを維持しつつも、今後は柔軟な姿勢で投資機会の検討を進めてまいります。

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