2026/10/9

SFDR改正議論とカディラの対応

SFDR改正とPABの投資除外基準

欧州では現在、SFDR(Sustainable Finance Disclosure Regulation:サステナブルファイナンス開示規則)の見直しが進められています。欧州委員会が2025年11月に公表した改正案では、従来の適用条文(Article 8/9)に基づく区分に代わり、「Sustainable」「Transition」「ESG Basics」のカテゴリーに基づく枠組みが示されています。

この改正案では、各カテゴリーに一定の投資除外基準を設けることが盛り込まれています。除外基準のベースとなるのは、EUの気候ベンチマークであるCTB(Climate Transition Benchmark)とPAB(Paris-Aligned Benchmark)の基準です。CTBではソーシャル・セーフガード(物議を醸す兵器、タバコ、国際規範違反)が除外基準とされており、PABではそれに加え、気候セーフガードとして石炭、石油、ガス、高炭素電力で一定以上の売上がある企業が除外対象となります。改正案では、TransitionカテゴリーとESG BasicsカテゴリーではCTBの除外基準に石炭関連売上1%以上の企業の除外を加えたもの、SustainableカテゴリーではPABの除外基準がベースとされ、さらにTransitionカテゴリーとSustainableカテゴリーでは、化石燃料の新規開発プロジェクトを進める企業などの除外も求められています(*1)。

こうした基準は、従来のSFDR Article 8/9において一律に適用されていたものではありません。実際に欧州委員会の諮問機関である「EU Platform on Sustainable Finance」の分析では、名称にサステナビリティ、環境、インパクト関連の用語を用いるファンドのうち、Article 8ファンドの約65%、Article 9ファンドの約49%が、PABの除外基準(国連グローバル・コンパクト違反を除く)に該当する企業を保有していました(*2)。除外対象となる保有の比率は平均で運用資産の4%前後と限定的ですが、その主な要因は化石燃料関連でした。SFDR改正後は、各運用会社が独自に設定してきた投資除外基準がEU共通の最低基準を満たしているかどうかによって、既存ファンドの投資対象や商品カテゴリーに影響が及ぶ可能性があります。

カディラの投資除外基準

カディラでは設立当初から会社としての投資除外基準を定めています。その内容はサステナブル投資方針として明文化しており、自社ウェブサイトを通じて対外的に開示しています。

カディラの投資除外基準はSFDR改正への対応を目的に設定したものではありませんが、PABより幅広い事業・行為を対象としており、PABの除外基準に照らして確認した結果、該当企業は保有していません。改正案のSustainableカテゴリーで追加される化石燃料の新規開発に関する除外についても、該当企業は保有していません。

参考までに投資除外基準の具体的項目を以下に示します。

〈事業基準〉

以下の事業の売上が5%以上の企業

アダルト・エンターテインメント、アルコール、石油・ガス、ギャンブル、非再生可能エネルギーによる発電、石炭の採掘、タバコ、軍事契約・小型武器、非在来型石油・ガス

〈行動基準〉

以下の項目について深刻な問題行為が認められる企業

人権侵害、労働権の侵害、環境問題への重大な関与、強要・汚職、生物多様性の毀損、水資源への重大な影響、脱税、独裁的な統治システム

投資除外基準に対する考え方のアップデート

昨今、地政学情勢やエネルギー需給などの環境は大きく変化しています。こうした状況においても、カディラでは従前からの投資除外基準を変更していませんが、背景にある考え方をより明確に整理することが重要と考え、改めて投資除外基準の合理性について社内で議論を行いました。

当社では議論を経て、サステナビリティを考える際の基盤システムを「産業活動」、「地球の熱収支」、「生存環境」、「意思決定」のループ構造として捉え直し、このループが健全に循環し続けることを持続可能な社会の必要条件と位置づけました。産業活動は温室効果ガスの排出などを通じて地球の熱収支に影響し、その変化は人々の生存環境を左右します。生存環境の状態は人々や社会の意思決定に反映され、その意思決定が再び産業活動のあり方を規定します。

カディラでは、この基盤システムを悪化させる事業への投資は社会の持続性低下を後押しするリスクがあると考えています。例えば、化石燃料は温室効果ガス排出を通じて気候変動を加速させ、兵器は紛争を通じて人々の生存環境を直接的に損ないます。また、依存性・中毒性の高い製品・サービスは人々の自律的な判断や社会の長期的な意思決定に影響を及ぼす可能性があります。こうした負の影響は、最終的に産業活動の持続性そのものを損なうことにつながります。

企業のファンダメンタルズとの関係性では、この基盤システムに対して負の影響を与える事業については、環境制約や社会制約によって、高い成長を維持できる成長期間が短くなる可能性があります。資源枯渇などの物理的な限界に達する場合はもちろんのこと、そこに至る前段階でも地域社会との軋轢や法規制などが事業にとって著しい阻害要因となることが考えられます。また、深刻な問題行為が認められる企業も社会的制裁を受ける可能性が高いことから、持続的成長を期待した投資には適さないと考えています。

カディラは、投資除外基準を厳格に適用しつつ、環境・社会を取り巻く状況の変化に応じてその根拠となる考え方を継続的に検証し、長期的な企業価値と持続可能な社会の実現の両面から投資判断を行っていきます。

なお、現在、非再生可能エネルギーによる発電については投資除外としていますが、技術革新によって低炭素な新たな選択肢が生まれた場合には、一律に排除するのではなく、気候変動への貢献と環境負荷等を総合的に捉え、ネットで社会・環境にポジティブな影響をもたらすと判断できる場合には、将来的に投資対象とする可能性があります。また、PABの電力に関する除外基準は発電時の排出原単位に基づくものであり、こうした見直しを行った場合でもPABの除外基準との整合性は保たれると考えています。

*1 European Commission, Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council amending Regulation (EU) 2019/2088 on sustainability-related disclosures in the financial services sector (SFDR), Regulation (EU) No 1286/2014 (PRIIPs) and repealing Commission Delegated Regulation (EU) 2022/1288, COM(2025) 841 final, 20 November 2025, Recitals (16)–(18) and Articles 7–9.

  https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52025PC0841

*2 EU Platform on Sustainable Finance, "Categorisation of Products under the SFDR: Proposal of the Platform on Sustainable Finance" (December 2024), Annex A, p.58.

分析対象はArticle 8ファンド9,147本、Article 9ファンド814本のうち、名称にサステナビリティ・環境・インパクト関連の用語を用いるファンド(それぞれ1,817本、495本)。

  https://finance.ec.europa.eu/document/download/8a3d0e56-4453-459b-b826-101b1067290f_en?filename=241217-sustainable-finance-platform-proposal-categorisation-products_en.pdf

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