2026/3/13

衆院選結果の振り返りと今後の焦点

衆院選の結果

2026年2月の衆議院選挙では、与党が大きく議席を伸ばしました。定数465議席に対して、自民党は316議席(前回比118議席増)を獲得し、単独で3分の2を確保しました。また連立パートナーの日本維新の会の36議席(2議席増)とあわせると352議席(120議席増)となり、全体の4分の3を占めています。一方、野党・無所属は合計で113議席(120議席減)にとどまり、勢力図は大きく変化しました。与野党ともにほとんどの政党が消費税減税を掲げるなど、政策が同質化する中、論点が高市首相を支持するか否かという点に集まり、結果として高市人気に乗る形で自民党が大勝する形となりました。

衆院選の直前は、衆参両院で与党が過半数割れだったことから、野党の協力なしでは審議を進められない状況でした。それが一転して自民党だけで3分の2を占める形となったことで、国会の状況は劇的に変化したと言えます。

 

衆議院3分の2の意味

衆議院で3分の2以上の議席を握ると、与党は極めて強い立法権限を持つことになります。最大の効果は、参議院で否決された法案を、衆議院で再可決できる点です。衆参で判断が分かれても、衆議院の3分の2以上の賛成があれば法案を成立させることができます。いわゆる「ねじれ国会」の状態でも、政策を前に進めることが可能になります。予算関連法案や重要政策法案について、野党の協力に大きく依存せずに審議・成立まで進めることができるため、政策実行のスピードと確実性が高まります。

また、3分の2という水準は憲法改正の発議に必要な議席数であることから、今後改憲に向けた議論が進むかもしれないという憶測が高まっていることも、今回の選挙結果を受けた重要な変化です。

 

市場の動き

自民党が圧倒的な議席を獲得したことは驚きをもって受け止められましたが、事前調査で高市首相の支持率の高さは周知されていたことから、市場にとってそれほど大きなサプライズではありませんでした。

振り返ると2025年7月の参院選で自民党が大敗した直後から、市場は石破首相の退陣と高市氏による成長志向型財政や戦略産業投資が始まることを織り込み始めたように見受けられます。TOPIXは最高値を抜けて、過去1年の横ばい推移から上昇基調に転じ、長期金利も4ヶ月前につけた高値を抜けて上昇傾向となりました。つまり、自民党の大敗が悲観材料ではなく新たな政策レジームへの移行として評価された側面があります。その後、10月に高市氏が内閣総理大臣へと選出され、高い内閣支持率が発表されると、それらの材料を追い風に株式市場と長期金利は上昇を続けました。今回の衆院選での自民党の圧勝は、昨夏以降に進行してきたこのシナリオを改めて確認する結果となりました。

 

今後の焦点

今後の焦点は、高市政権が強固な議席基盤を活用し、国民からの支持を得られる政策を打ち続けられるかどうかです。これまでの自民党政権は党内調整を通じて基盤を固めてきましたが、高市首相は国民の支持によって基盤を固めているため、支持率は従来以上に重要な指標となります。

その鍵となるのは実質賃金の動向でしょう。日本では2025年1月以降、物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、実質賃金が前年比マイナスとなる状況が続いています。幸い、足元では物価上昇ペースは徐々に落ち着きつつあります。2026年1月の消費者物価指数は前年比1.5%(*1)上昇で、3年10ヶ月ぶりの2%割れとなりました。ガソリン減税の実施、昨年急騰したコメ価格の上昇一巡、中国旅行客の減少などが重なったことが要因と考えられます。今後も物価上昇を抑えつつ、一方で賃金上昇を継続させることができれば、国民の支持を得やすくなるため、これらが政策の優先事項となるでしょう。

 

ジェンダーダイバーシティ動向

最後に、ジェンダーダイバーシティの観点も見てみましょう。今回の衆院選で女性当選者は68人で、全体に占める割合は14.6%となり、2024年に行われた前回衆院選の73人(比率15.7%)から低下しました(*2)。自民党は女性比率が他党より低いことから、自民党の大勝が全体の数値を押し下げる要因となりました。自民党単独での女性議員比率は12.3%で、前回の9.9%(*3)より改善していますが、党の目標である「2033年までに30%」との比較ではまだかなりの開きがあり、さらなる改善が求められます。

全体としてみると、政界におけるジェンダーダイバーシティの取り組みは道半ばですが、個別にみると、高市氏が総理大臣になり、片山さつき氏が財務大臣に就任したことなど、主要閣僚を女性が占めていることに、一定の前進が見られます。今後、高市首相に触発される形で実力のある女性政治家の活躍が増え、多様な視点が導入されることになれば、バランスのとれた政策判断がなされるようになると予想されます。

 

*1 https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

*2 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA093OX0Z00C26A2000000/

*3 https://www.gender.go.jp/policy/seijibunya/pdf/hiritsu.pdf

 

衆院選得票数データ(読売新聞)⇒https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/

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