2024/6/28

日本政府によるインパクト投資の普及推進策について

日本政府はインパクト投資の普及推進を目指した取り組みを進めています。2024年3月にインパクト投資のガイドラインを公表したことに続き、2024年5月には官民連携のインパクトコンソーシアムを立ち上げるなど、次々と具体的な施策を打ち出しています。

日本におけるインパクト投資残高は2023年度で11.5兆円でした(1)。日本の資産運用会社の運用受託額833兆円(2)に占める割合は1.4%程度とまだニッチな分野です。しかし、前年度から比較すると97%増とほぼ倍増となっており、政府の後押しが投資行動の変化に表れている様子がうかがえます。

さて、インパクト投資とは一般的な投資と何が違うのでしょうか。金融庁が3月に公表した「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針」においては、インパクト投資の基本的要素として、以下の4つが示されています。

①    インパクトの実現を「意図」する「社会・環境的効果」が明確であること

②    投資の実施により、インパクト効果の実現に貢献すること

③    インパクト効果の「特定・測定・管理」を行うこと

④    市場や顧客に変革をもたらし又は加速し得るよう支援すること

(青色部分はカディラによる補足記入)

これら4つの要素のうち、従来型の投資との定義の違いが明確にわかるのは、②の「貢献すること」とや、④の「支援すること」という表現の部分です。一般的な投資が「投資家の便益」であるリターンについて注目することと比較すると、②や④は「投資家の貢献」という点に着目しています。

「投資家の貢献」とはどのようなことを言うのでしょうか。わかりやすいのは資金不足の企業に投資をすることです。例えばスタートアップ企業などビジネスモデルを構築中の企業は資金不足になりやすいので、出資することが貢献に直結します。

一方で、上場企業に対して市場取引を通じて投資を行う場合はどうでしょうか。投資金額が直接企業に渡るわけではないので、出資することの貢献は小さいと言わざるを得ません。よって、上場企業に対して投資家が貢献するためには、資金拠出以外の活動、例えば対話を通じた側面支援などが必要になります。

対話の効果というのは見えにくいですが、近年はこの可視化の取り組みが進んでいます。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最新の調査によれば、運用会社の対話が「投資先の企業価値向上に加えて、脱炭素への取組みやダイバーシティ向上など持続可能性向上にも貢献している可能性が高い」(*3)とされており、対話による貢献の効果が確認できる結果が示されています。

これらの点を踏まえてインパクト投資が普及した世界を予想してみましょう。そこで起こる一つの変化は「運用会社が対話による貢献を競い合う」という状況です。つまり、投資リターンに加えて投資家の貢献の優劣も、主要な競争軸になるということです。そのような世界では、投資判断の基準も変化するでしょう。サポートする余地のない完璧な会社ではなく、改善余地のある会社の方が投資する意義が大きいという認識の変化が起こりえます。また、企業側が投資家の意見に対してオープンである方が、運用会社にとっては貢献しやすいことから、企業のIR姿勢が投資判断に大きな影響を与えるようになることも予想されます。

このような社会の認識の変化は短期間で起こるモノではありませんが、時間をかけて着実に変化を続けていけば、結果として資本市場が社会に対してポジティブなインパクトを生む場になっていくことが期待されます。

カディラでは、このようなシナリオを長期にわたり起こりうる変化として意識した上で、活動を続けてまいります。

*1 GSG国内諮問委員会「日本における インパクト投資の現状と課題」

https://impactinvestment.jp/user/media/resources-pdf/gsg-2023.pdf

*2 内閣官房「資産運用立国に関する基礎資料」

siryou2.pdf (cas.go.jp)

*3 GPIF「エンゲージメントの効果検証プロジェクト報告書」

https://www.gpif.go.jp/esg-stw/20240521engagementreport.pdf

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