2025/4/23

EMP対談:新しい資産運用の担い手を育てる「EMP」の現在地と可能性(後編)

参加者:

  • 株式会社かんぽ生命保険 執行役員兼運用企画部長 野村裕之氏(写真中央左)

  • 大和アセットマネジメント株式会社 社外取締役 小野塚恵美氏(写真右)

  • 大和アセットマネジメント株式会社 運用本部 運用副担当兼スチュワードシップESG担当兼調査部長 参与 塩田淳氏(写真左)

  • カディラキャピタルマネジメント株式会社 代表取締役CIO 清水裕(写真中央右)

カディラキャピタルマネジメント株式会社(以下、「カディラ」)は、株式会社かんぽ生命保険(以下、「かんぽ生命」)、株式会社大和証券グループ本社(以下、「大和証券グループ本社」)、および大和証券グループ本社の連結子会社である大和アセットマネジメント株式会社(以下、「大和アセットマネジメント」)の新興運用会社促進プログラム(Emerging Manager Program, "EMP")における第一号案件を受託いたしました。これを受けて、EMPのオーナーであるかんぽ生命の野村氏、大和アセットマネジメントから塩田氏をお招きし、お話を伺いました。モデレーターは、大和アセットマネジメントの社外取締役である小野塚氏に務めていただきました。

ー前編はこちらからー

当プロジェクトの差別化要素

―小野塚氏:では次に、EMPについて今後プログラム数が増えていくことが予想される中で、他の取り組みと比べてどう差別化されていくのかという点についてお聞きしたいと思います。

塩田氏:今回のプログラムのユニークな点は、国内有数のアセットオーナーであるかんぽ生命と、国内有数のアセットマネージャーである大和アセットマネジメントが共同で取り組んでいるという点です。この「連携」こそが非常に大きな強みであり、プログラムとしてのプレゼンスを高めることになると考えています。先ほど野村さんからも触れていただきましたが、「かんぽ生命が投資しているのであれば安心だ」と感じる投資家も多く、信頼感という面で大きなアドバンテージを持っていると感じています。これは、我々にとっても非常に心強いポイントです。

また、大和証券グループ全体としての強みである個人、法人、海外など、非常に広範な投資家層にリーチできるチャネルを持っているというのも重要な要素です。加えて、大和アセットマネジメント自体も、投資信託の分野において長年の経験と実績を有しており、豊富な商品組成のノウハウを蓄積しています。例えば、「良いマネージャーを見つけたけれど、どのようなファンド形態にするか?」という場合、UCITSファンドをFoFsで取り込む、あるいは委託助言によるファンドの形で対応するといった、多様な商品形態に柔軟に対応することができます。これは、過去に多くの商品開発を行ってきたからこその強みです。

かんぽ生命と組むことによる信頼性、グループとしての販売力、そして大和アセットマネジメントとしての商品組成能力やDD能力——これらが掛け合わさることで、今回のプログラムは他のマネージャーの取り組みと比べても、非常にユニークな存在になっていると思います。

小野塚氏:ありがとうございます。商品組成の話、とても重要ですね。一般的に「投資」と聞くと、多くの方は株式や債券、為替といった「投資対象そのもの」をイメージしますが、実際にはそれらにアクセスするための「商品」や「ビークル」の設計が非常に重要な要素なんですよね。この「どういった投資形態で商品を組成するのか」というスキルセットがアセットマネジメントの現場にはしっかりと蓄積されていて、まさに大和アセットマネジメントが大和証券グループ内でも重要な役割を担っているポイントだと思います。

塩田氏:おっしゃる通りだと思います。大和アセットマネジメントでは、自社運用の商品だけでなく、他運用会社をアドバイザーとしたファンドや、FoFs型の商品も数多く取り扱っています。投資信託で多様な商品形態に対応してきた経験から、どのようなマネージャーであっても、そのスタイルに合った形で組成が可能です。大和アセットマネジメントの場合は、投資信託という枠組みの中で様々なパターンを作り上げてきた歴史があり、そこに大きなアドバンテージがあると考えています。

EM(新興運用会社)選定基準について

―小野塚氏:プログラムの中身に入りたいと思います。EMPでは、まずEMがショーケースに登場し、その後選定のプロセスへと進むわけですが、EMPを提供する側として、どういった基準でEMを選定しているのか、可能な範囲で教えていただけますか?また、具体的にカディラが選ばれたポイントについても、併せてお聞かせください。

野村氏:EMPにおける投資判断のポイントは、目利きであると考えます。特に今回は、過去のトラックレコードがないEMへの投資。ある意味では、アセットオーナーとしても「本気の向き合い」が求められる難しい取り組みでした。正直、まだ何も始まっていない段階で「本当にこの運用会社に投資していいのか?」と判断しなければならないのは大きなチャレンジです。万一、開始直後に事業継続が難しくなるようなことがあれば、EMP全体の信頼性に関わる。

通常の上場株投資とは異なり、EMに関しては情報も少なく、過去のデータも乏しい。だからこそ、対話を通じた本音のやり取りが重要になります。「この運用会社はどこを目指しているのか?」「どんな独自性があるのか?」を、実際に深く話して初めて見えてくるものがあります。特に重視したのは、「我々がこれまで見たことのないような投資先や視点を持っているかどうか」です。既存の運用スタイルをなぞるだけでは、EMPをやる意味がない。今まで資金が届いていなかった領域に投資が向かうこと、つまり日本市場全体に新しい風を吹き込んでくれるようなEMに期待していました。

加えて、EMは小規模な組織であることが多く、運用者数も限られています。ですので、「この人に託して本当に大丈夫か?」「一緒に育っていけるか?」という視点も欠かせませんでした。単に「外部に任せる」という感覚ではなく、まるで自社の仲間のような関係性が築けるかどうかが非常に大切です。結果として、我々が納得できるまでしっかりと対話を重ね、共に目線を合わせた上で、「この人たちとならやれる」という確信を持てたら、多少の波風があっても続けていける。

つまり、形式的な基準や点数ではなく、徹底的に個々に向き合っていく。そのうえで、新しい分野に挑戦し、変化を起こしてくれる存在であるかどうか。カディラにそのポテンシャルを強く感じた、ということです。

塩田氏:EMPにおいて私たちが最も重視しているのは、やはりDDのプロセスです。候補先となる運用会社については、EM Showcaseのような公開プラットフォームを通じて見つかる場合もありますし、その他の経路から接点が生まれることもあります。どのケースでも、まず確認すべきは、経営基盤や運用体制、ミドル・バックオフィスの整備状況といった基本的な部分です。これはEMP以外でサブアドバイザーを選ぶ場合と同様の視点で進めています。

ただ、それだけでなく、さらに大事にしているのは、その運用戦略やビジネスモデルに「光るもの」があるかどうかです。相対的に優れているかどうかではなく、絶対的に見て独自性があり、面白さがあるか。つまり、その会社に資金が入ることで、さらに成長していく可能性が感じられるかどうか。そこが大きなポイントです。自社の運用戦略と補完関係にあるかといった視点ではなく、その運用会社ならではの独自性があるか。そして、その根底にある運用哲学にしっかりとした軸があるか。ここを非常に重視しています。また、EMを選定する際には、やはりキーパーソンリスクが大きな論点になります。運用者の数が少ないケースが多いため、誰が運用しているのか、そしてその人物に継続的に任せられるのか、という点はとても重要です。今回、カディラとのDDでは、坂本社長と清水CIOのお二人と深くお話しさせていただく中で、このキーパーソンリスクに関する懸念をある程度払拭することができました。特にお二人の強いコミットメントと、ビジョンに裏打ちされた継続性は、我々が重視する要素そのものでした。

カディラについては、サステナビリティの観点でも非常にユニークで、評価すべき取り組みがありました。私自身、大和アセットマネジメントでアナリストとして活動していた10年ほど前に、ESG要素を企業価値にどのように反映させるかというテーマに取り組んだことがありました。たとえば、ESGスコアに応じて割引率を調整するようなモデルをつくり、ガバナンスなどの「見えない価値」と伝統的なファンダメンタルズ分析を統合して企業評価の中に取り込もうと試みました。その評価手法は現在も当社の日本株の運用プロセスの中に組み込まれています。カディラのプログレスレポートを拝見したときに、インパクト統合価値(Impact Integrated Value)の考え方は、まさに同様の思想に基づいたアプローチであると感じました。清水CIOの前職時代から継続してきた運用哲学が、独立後もぶれることなく実行されている点も、非常に信頼がおけると感じました。

DDを進めていく中で、その独自性や思想、そして継続性がしっかりと伝わってきたことが、今回の選定における大きな判断材料になったと考えています。カディラは、EMPの枠組みの中でも、今後さらなる成長が期待できる非常に有望なEMだと確信しています。

清水:全体の印象としては、非常にフェアで、かつ育成的な視点を持って接していただけたと感じています。今回のようなDDは、私たちのような創業間もない小規模な運用会社にとっては、単に選ばれる・選ばれないの話だけでなく、自社の体制そのものを問われる大切なプロセスになります。実際、DDにどのように対応できる体制があるかは極めて重要でした。

弊社では、運用面は私が、事業開発やオペレーション面は社長である坂本が主に担っておりまして、役割分担を明確にすることで、運用そのものに支障が出ないようにプロセスを進めることができました。そこは体制面として一定の評価をいただけた点だったのではないかと感じています。また、EMPが始まる以前から、かんぽ生命とはインパクト投資の文脈でやり取りがあり、大和証券グループとも以前にミーティングの機会があったことから、ある程度私たちの考え方やスタンスをご理解いただいていた土壌があったと思います。特に両社とも、サステナビリティやインパクトという観点において強い理念を持っておられたので、当社としても共感し、ぜひご一緒したいと考えていた中で、今回このEMPの枠組みに進んでいけたことはとてもありがたく、また自然な流れだったとも思います。もちろん、私たちは選ばれる側の立場ではありますが、実際には他のプレーヤーからのアプローチも複数あった中で、このプロジェクトが先行し、良い形で進展していったことには大きな意義があると感じています。

DDのプロセス自体について言えば、こちらとしてはむしろ「学びの場」だったと思っています。私も坂本も、前職を含めて国内の機関投資家とのビジネス経験がほとんどなかったため、どういった視点で見られるのか、どのようなポイントが重視されるのかという点を、実際のプロセスを通じて知ることができたのは本当に貴重でした。また、今回は「育てる」という視点を持って向き合っていただけたことがとても印象的でありがたかったです。DDというと、どうしても「試される」「審査される」といった一方通行な印象を持たれがちですが、今回は対話的なやり取りがあり、「どういうことが求められているのか」ということを正直ベースで質問させていただくことができました。そうしたやり取りの中で、こちらも納得しながら準備を進められましたし、自分たちの考えや体制を再確認する機会にもなりました。非常にフェアで建設的なプロセスだったと実感していますし、スタートアップとしては、このような機会があること自体が非常に貴重だと感じています。

野村氏:カディラについては、以前からさまざまな場面でお会いしてお話させていただいてきたこともあり、外部で非常に積極的に活動されている印象があります。EMとはいえ、すでに一定の存在感を築かれていて、市場の中でも少しずつ名前を浸透させていっている。やはり、そうした日々の地道な活動がとても大切なのだと改めて感じました。

そして、運用を委託する立場として特に重要だと考えているのは、やはり少人数体制の中で、本気で運用に向き合っていただけるかどうかという点です。実際に投資家としては「この要望に合わせてカスタマイズしてくれませんか」といった話をしたくなる場面もありますが、そういった方向に寄せすぎて、EMの方々の本来の運用スタイルがぶれないことを希望します。

我々としても、EMが自分たちの信じる運用哲学のもと、集中して運用に取り組める環境を整えることが重要だと考えています。ファンドマネージャーが本来の力を発揮するためにも、あまり業務的な追加負荷がかからないようにすること、これも実は非常に大事なポイントだと認識しています。今後、EMに対して複数の投資家からの資金が集まってくる中で、運用に集中できる体制が維持されているかどうか、そこは大和アセットマネジメントと共に引き続きしっかりと見ていきたいと思います。

ー小野塚氏:逆に、EMPのDDプロセスについて、「もっとこうだったら良かった」と思う点や、今後改善の余地がありそうなポイントがあれば、ぜひ伺いたいです。たとえば、DDの全体像が初めからもう少し見えていたらよかった、あるいは同じ質問が繰り返されたといったことなど、EM側の目線から、今後のプログラム改善のヒントになるような意見があれば教えてください。

清水:そうですね、細かい点かもしれませんが、スケジューリングについては改善の余地があったと思っています。最終的には当初予定されていた3月末のタイミングで着地したのですが、実質的に本格的にスタートしたのは12月中旬ごろで、かなりタイトなスケジュール感でした。もう少し早めに全体像が共有されていれば、準備にも余裕が持てたかもしれません。

また、関係者が多い分、DDの過程で同じような質問を別々のルートで何度か受けるということもありました。これは仕方のない部分もありますが、事前に整理されていれば、もう少し効率的に進められたかもしれません。運用面でのご指摘は特になかったですが、こうしたプロセス設計の部分では今後の改善につながるポイントだと感じました。

小野塚氏:確かに今回のEMPのように、大所帯のアセットオーナー側と、小回りの利く新興運用会社が一緒に取り組むという構図自体が非常にチャレンジングですよね。でも、そこがまさに面白さであり、意義のある部分でもあると思っています。お二人(清水、坂本)はもともと比較的大きな企業のご出身なので、柔軟にご対応いただけたと思いますが、すべてのEMがそうとは限りません。中には大企業側の進め方やロジックに馴染みがなくて戸惑ってしまう方もいると思いますし、場合によっては反発してしまうようなケースもあり得ます。そうならないためにも、「お互いの事情や背景を尊重し合う」というスタンスが、今後さらにEMPの価値を高める鍵になるのではないでしょうか。制度設計の段階から、そうした視点を持ち込むことができると、より多くのEMにとって参加しやすい枠組みになるように思います。

ー小野塚氏:逆にEMP運営側として、今後の改善ポイントや「次回はこうしたい」と思う点などがあれば、ぜひお聞かせください。

塩田氏:やはり時間が短かったというのはありましたね。ただ、今回は第1弾ということもあって、スケジュール管理の面ではまだまだ改善の余地があると感じています。それから、今回のカディラに対するDDは、他の運用会社に対してDDを行ってきたチームが臨みました。これまでDDの対象としてきたのは主に海外の大手運用会社でしたので、いわゆる「キーパーソンリスク」についてはあまり強く意識せずとも良いケースが多かったです。そのため、EMへのアプローチ方法に慣れていなかった分、難しさはありましたね。

ただ、今回のカディラに関しては、お二方としっかり議論させていただけたので、その点はしっかり担保できたと感じています。EM特有のDDのあり方というのはあると思うので、そこは今後も我々として学びを深めていかなければならないと考えています。

野村氏:今後の難しさを感じるのは、たとえばかんぽがEMに投資して、その結果、5年後に「この投資が今の活性化につながった」と言えるようなケースを生み出したいという点です。今はまだ目立っていない分野に投資するEMと出会い、5年後に「やっぱりあれがきっかけだったよね」と言われるようなことを実現したいのです。それってすごく難しいことですが、同時に面白いことでもあると思っています。そういった将来を見据えた野心のあるEMと出会いたいですね。そのためには、我々が日々EMと会って目利き力を磨く必要がありますし、EM側にもその魅力をしっかりアピールしてもらいたいのです。

野村氏:実際にDDを受ける立場として、皆さんはどのように感じられましたか? 何か新しい気づきがあったのか、それとも時間的に非効率だったのか。率直な感想を聞かせてください。

清水:そうですね。質問を受けて、それに答えるというプロセス自体が、思考を深めるきっかけになると感じました。もちろん、DDを受けること自体には何の問題もありません。むしろ、海外の投資家からの質問に丁寧に答えたにも関わらず、結果的に投資に至らなかったという経験もあるくらいです。

野村氏:その点、海外との違いってありますか? たとえば、海外のDDに比べて、日本のDDはどう違うのでしょう?

清水:ヨーロッパは、特にサステナビリティ関連の質問に関しては非常に細かいです。それに比べると、日本のDDはまだ…正直、やさしいところもあると思います。

野村氏:甘いってこと?(笑)

一同:(笑)

清水:そういう面もありますね。一方で今回のDDで特徴的だったのは、レファレンスチェックです。前職でのつながりなど、我々に関する背景情報を事前にリサーチしていただいたんですよ。それは我々にとっても新鮮な体験で、「これはやった方がいいな」と感じました。

塩田氏:そうですね。キーパーソンリスクを意識し始めると、それは人材採用と似た話になります。人を採用する際にリファレンスを取るのと同じように、運用担当者がどういう評判を持っているかというのは、EMでは特に重要になると感じています。

野村氏:やはり一緒に仕事をする感覚になりますからね。同じ会社の一員として運用してもらう以上、「悪いことはできませんよ」というような責任感が自然と芽生えるというか。
他のファンドと違う空気感があると思います。

塩田氏:私たちが日本株のマネージャーをDDする機会はそれほど多くなく、今回は初めてに近い経験でした。その中で日本株運用の経験者をチームに入れるなど、DDの専門性を高める社内体制づくりができました。今回の取り組みを通じて、社内のアップグレードにもつながったと実感しています。

野村氏:DDをすること自体に価値があるんだ、という意識を持つのは大事ですよね。時間の無駄ではなく、むしろプラスになる。私たちとしても、5年後に「あの時やってよかった」と思えるようにしたい。もちろん手間もかかるし、規模感的には小さい投資かもしれないけど、それでも金額では測れない意味がある。日本をより良くする、新たな成長分野を見出すという意味でも、この仕組みには非常に大きな価値があると考えています。

「反ESG」と「インパクトを考慮した投資」

―小野塚氏:サステナビリティやESGの話が出てきましたが、今は地域によっては逆風が吹いていて、「ESG」という言葉自体を使わないという声もあります。そうした中で、日本は資産運用立国として、非財務の統合や社会的インパクトと投資の両立を目指していくべき市場ではないかと、個人的には考えています。そこで、今回選ばれたカディラが結果としてそうした価値観と一致していたという点について、ぜひ皆さんから一言ずつコメントをいただければと思います。

野村氏:日本らしさが出たと思いますね。アメリカはアメリカで議論が揺れていますし、ヨーロッパは環境面ではかなり先鋭的ですが、日本には日本ならではの社会課題がある。たとえば、人口減少の中でどうやって成長していくか。それこそ今をゼロ地点として、そこから「インパクト」を生み出していく必要がある。ESGという言葉に右往左往するより、日本独自の課題に向き合うべきです。そういう意味でも、分散投資の観点から日本は面白い投資先になり得る。海外には理解されづらい部分もありますが、課題解決によって日本が良くなるという文脈を共有できれば、大きな可能性があると考えています。

塩田氏:おっしゃる通り、ESGやサステナビリティに関する世の中の評価は揺れていますが、我々大和アセットマネジメントとしてはそこにブレはありません。価値の源泉として「見えないものを見つけ評価する力」が我々の競争力だと考えており、それを企業との対話=エンゲージメントにも生かしています。インパクトと経済的リターンの両立を実証していくことが重要で、それをカディラと一緒に広げていければと良いと思っています。「日本株のインパクトを考慮した投資といえばカディラ」というブランドを築いていってほしいし、我々もできる限りの支援をしていきたいです。

小野塚氏:いわゆる伝統的なインパクト投資とは異なる形で、ファンダメンタルズの中にインパクトの要素を織り込むという、カディラ独自の手法を評価されたのではないかと思います。これは新規性や独自性という点でも意義ある取り組みだと感じています。カディラとしては、そうしたアプローチで評価されたことについて、どのような想いがありますか。

清水:カディラ独自のインパクトを企業価値に織り込む「インパクト統合価値」の考え方は、最近発表されたGPIFが検討を始める「インパクトを考慮した投資」に近いとも考えています。これはご指摘の通り、いわゆる伝統的なインパクト投資とは異なるものです。かんぽ生命はインパクト投資の認証フレームワークである「インパクト"K"プロジェクト」を推進しており、伝統的なインパクト投資に関わるアセットマネージャーからするとある意味選ばれたらいいな、という憧れのようなものです。我々のアプローチはそのままだとこのプロジェクトでは選ばれなかったかもしれませんが、EMPという枠組みで少しでも我々のインパクトを考慮した投資のアプローチをご評価いただけたのであれば非常に嬉しく思います。また、大和グループに関しては、マイクロファイナンスのボンドなど、早期からサステナブルファイナンスに取り組まれてきた流れの中に自分たちが乗れたことに大変光栄に思います。


今後は「インパクトを考慮した投資といえばカディラ」と言われるように、独自性あるメッセージを世界に発信していきたいと思っています。特に今のようにサステナビリティの議論が揺れているときだからこそ、日本から着実に取り組んでいく姿勢が重要ではないかと感じています。

EMPの今後と日本の運用業界への波及効果

―小野塚氏:ありがとうございます。今のお話は、まさにこの対談のまとめにもつながっていたと感じます。もし付け加えたいことや、読者へのメッセージがあればお願いします。

塩田氏:このプログラムは始まったばかりですが、最初のパートナーがカディラで良かったと感じています。我々の責務として、これを継続的に発展させていきたい、今後は外部資金の導入も視野に入れつつ、優秀なEMを発掘するゲートキーパーとして、プログラムを進化させたいと思っています。EMPの効果で、海外では個性的な運用会社が登場しています。日本でも、カディラのような存在を増やし、日本の運用の多様化につなげたいです。

野村氏:国内の金融業界全体を活性化させ、国民が投資にアクセスすることで資産形成が進み、そこからイノベーションが生まれる。それが日本を強くするサイクルだと信じています。何度も言いますが、「5年前のあれが今につながった」と言える未来を作りたい。そのためにも、我々アセットオーナーとして責任ある投資判断と発信をしていきたいと思います。

清水:最近、立ち上げを目指しているという方々から相談を受けることが増えてきました。EMPのような枠組みができたことで、「自分もできるかもしれない」と思ってもらえるようになったのだと思います。これから始めるEMにとって、我々が少し先を行く「兄貴分」としてサポートできれば、それが業界全体の活性化にもつながるはずです。そんな役割を果たしていきたいです。

小野塚氏:私自身、2000年からこの業界に携わってきましたが、20年間アセットマネジメント勤務した頃感じていたのは「閉塞感」でした。EMとして飛び込んだときには、資金調達も苦労しましたし、こうしたプログラムは存在しませんでした。だからこそ、今回のEMPは大きな変化の兆しだと感じます。小粒であっても、理解され、責任ある運用ができれば、それでいいという世界、「みんな違ってみんないい」と言える世界を、このプログラムが体現してくれた。これが広がれば、日本の運用業界は本当に明るい未来を持てると思っています。

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