2024/2/2

インパクトの計測と管理

カディラでは、私たちの投資活動が最終的にどのように社会に影響を与えているのかを把握するために、投資先企業が生み出すインパクトの計測・管理(Impact Management & Measurement、以下「IMM」)に取り組んでいます。

私たちの活動は、上場株投資に適したIMMの手法を考えるところから始まります。IMMには、会計制度のような統一基準が存在しません。また、もともと政策決定や非営利組織の評価に利用されていた手法であり、投資活動の評価に使用するにあたっては、実情に合わせた工夫が必要です。

私たちは、上場企業投資に適したインパクト評価の手法を開発し、業界内で知見共有することで、インベストメントチェーンのインパクト志向を高めることへの貢献を目指しています。

IMMの方法

IMMにおいては、ポジティブインパクト創出につながるソリューションに注目します。下のテーブルは、私たちの社会課題の整理におけるアウトカム分類と、ソリューション分類を紐づけたものです。

主要事業におけるソリューションを当社基準で分類し、SDGsの17個のターゲットと169個のサブターゲットのフラグ付け(1社に1フラグ)を行います。そして、売上比率やKPIについて確認を行います。

また、企業活動の中でも特に追加性(インパクトへの追加的な貢献の高さ)が高い部分を取り上げて、そのソリューションが対象とする社会課題の構造要因とその具体的な影響、解決に向けての具体策とそれを実現するための企業の独自性や優位性などについて分析を行い、ロジックモデルを作成します。これらの作業はインパクト統合価値(IIV)による企業価値計算の過程において行います。

ソリューションとSDGsの分布

下のテーブルは、ポートフォリオにおけるソリューション分類とSDGsについてウェイト分布を示しています。

私たちはこれを投資行動の結果として捉え、自分たちの課題認識を確認するツールとしています。2024年12月末においては生活改善に関連したソリューションの比率が高くなっています。インフレや格差が社会課題となるなか、一般市民の生活の質を改善することの社会的意義が高まっているという課題認識がこのデータに反映されています。

ウェイト目標値を設定しない理由

カディラでは、ポートフォリオ構築の際に、ウェイトの目標値をあらかじめ定めるアプローチをとっていません。投資判断はファンダメンタルズの状況や株価の割安度など、他の検討要素を加味して行うため、目標値を設定すると判断が複雑になりすぎるためです。また、株価変動によってポートフォリオのウェイトは日々変化するため、目標値を定めるとそれに合わせた株の売買が頻繁に発生するという課題も発生します。

インパクト関連事業の売上比率

カディラでは、投資先企業のインパクト関連事業の売上比率を集計しています。売上比率の大きさは、そのインパクトが企業の中でどの程度の重要性を持つのかを表す一つの指標となります。当社ポートフォリオにおけるインパクト性のある主要事業の売上比率の加重平均は2024年12月末で71%となりました。集計対象となる事業を特定する方法は、当社のソリューション分類に該当し、SDGsへの貢献が認められることを判断基準としています 。その際に、外部データやAIを使った業種とソリューションの関連付けを参考にしています。現状、投資判断として売上比率の閾値を設定していませんが、今後はより明確な基準を検討していく方針です。また、売上特定プロセスも更なる高度化を目指していきます。

売上比率が低い事業の評価

主要事業とは別に、社会課題解決において特に重要な活動については、売上比率が低くても深く分析を行います。例えば、住友林業の場合、売上の約5割を占める海外住宅事業において、住宅不足という社会課題に向き合っていますが、それとは別に森林管理の事業を営んでおり、地球環境保全に貢献しています。森林管理を行う事業の売上比率は2%に満たないのですが、住宅事業のサプライチェーン維持にもつながる活動であるため、売上比率以上に意義のある事業と言えます。このような社会課題起点で重要な活動については、追加性という観点を重視して、評価を行います。

追加性についての考え方

なお、当社では主要事業のインパクト性を評価するときに、追加性については一定の柔軟性を持つようにしています。社会に浸透していて、ないと困る製品・サービスについて、安定的に供給し続けることは社会にポジティブな影響をもたらしていますが、追加性が高くない場合も多く見受けられます。例えば水道、エネルギー、通信などは広く社会に普及しており、一瞬でも使えなくなると生活に大きな支障が出てしまいます。これら生活インフラの安定性維持に尽力することは、追加性は低くても社会にポジティブな影響を与える活動であると評価できます。

インパクトKPIの管理

カディラでは、投資先企業の調査過程において、インパクトに関するKPIを記録し、管理しています。下の表では、ポートフォリオのインパクトKPIの中から、一部を理解しやすい形で記載しています。

KPIの収集方法

インパクトKPIは、財務情報のように標準化がなされていないため、企業によって開示する項目は異なります。当社は、まず企業の開示情報の中から関連するデータを選別します。文書で明示されていない場合は口頭確認や推計によってデータを収集します。

データの種類はアウトプット(行動履歴)と、アウトカム(活動成果)に分類されます。インパクト把握のためにはアウトカム情報が望ましいのですが、計測が容易ではないため開示していない企業が多いのが実情です。アウトカムが把握できない場合、アウトカムへのつながりが推定できるアウトプットのデータを把握して記録付けを行います。また、目標と実績の両方の開示が望ましいのですが、これもどちらか片方だけの開示というケースもあるため、不足している場合は開示を促します。

KPI管理における課題

インパクトKPIは企業の活動が社会課題の解決に貢献しているかを確認するためには重要な役割を果たしますが、KPIの種類が様々に存在するため、横比較は困難です。また、同類のKPIでも定義が異なる場合があるため、集計する場合には精査が必要です。また「データ集計のしやすさ」に投資判断が引っ張られすぎて、真に解決すべき課題や、投資リターンの視点を見落としてしまわないように注意が必要です。

インパクトの定性評価

インパクトの評価を企業価値計測に組み込む際には、企業のインパクト管理体制とインパクトの質を評価しています。インパクトKPIで捕捉したデータを金額換算するのではなく、インパクトを定性的に評価して、それを将来の成長期間の調整という形で推計に組み込んでいます。温室効果ガスのように標準化され、市場で価格がついている一部の指標は、直接キャッシュフローを加減算する形で調整することも可能ですが、多くのインパクト指標は、まだ標準化がなされていないため、金額換算の難易度が高いためです。

評価は担当者が個別企業を調査した上で、判断基準を参照しながら定性的に判断を行っています。現状は属人性が強いため、一貫性を高めるために客観的な基準を設定することが中長期的な課題であると考えています。

(2025年4月更新)

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